①冬の箱根

古民家12軒の廃材を使って建てた箱根の家

 

箱根には、冬が東京より少し早くやってきます。紅葉のときには観光客で賑わっていた芦ノ湖なども、空気の冷たさが増すにつれ、静けさに包まれていきます。でも、私はそんな静寂の中の箱根も大好き。澄み切った空に、雪に染まった富士山が聳え立ち、心を冴え冴えとて照らしてくれるような気がします。

箱根で暮らし始めて、34年になりました。中学時代、図書館で民芸の創始者・柳宗悦先生の本に出合い、私も先生のように日本の古く美しい道具を見て歩きたいと20歳から、日本の農村を歩いてきました。その旅がこの家との出合いも作ってくれたのです。

山陰を旅していた時、「助けてぇっ!」という悲鳴が聞こえ、あわてて駆けつけると大きなかやぶきの家にたどり着きました。悲鳴と思ったのは、チェーンソーが梁を切ろうとしている音。「日本列島改造」論の元、日本全国に開発の波が押し寄せた時代でした。

古民家の生きた木の家の力強さ、温もりを次世代に伝える

 

それらの材料を一本残らず使い「古いものと現在」、「和と洋」が調和した家を思い、造り上げたのが箱根の家です。今でこそ、古民家再生の職人さんも増えてきましたが、当時はすべて手探り。住める状態になってからも、内装などに手を加え、完成するまでに20年以上かかりました。この家で男の子2人、女の子2人、計4人の子供を育てました。

家の中でもっとも気に入っている場所は囲炉裏の間です。大晦日にはここに和ろうそくを灯し、囲炉裏の神様に感謝を捧げ、灰をかぶせて火種をとっておき、日付が変わると、飛騨から取り寄せた豆ガラに火種を起こします。今年もマメで元気に暮らせますようにとの願いをこめて。私が座るのは、土間を背にする「かか座」。夜が更けるのも忘れて、家族や友人と話をしたのもこの場所でした。

4人の子どもたちが成人し、家から巣立って行ったとき、箱根の家は家族のためだけのものではなく、当時、壊され消えていくだけだった古民家の美しさを、次世代につないでいきたいという思いもあって建てた家であることに、改めて気がつきました。そこで昨年から、日常に彩をもたらすような企画を大広間で催したりしながら、少しずつ皆さまを我が家にご案内させていただいたりもしています。

箱根のキリッとした表情を楽しめるのは冬です。箱根神社への初詣もかねて、思い切って冬の箱根を味わってはいかがですか。

浜さん宅

はま みえ

1943 年東京生まれ。60 年東宝よりデビュー。67 年映画「007は二度死ぬ」。75 年フジテレビ「小川宏ショー」で司会、80 年毎日放送「いい朝8時」で八木治郎氏と司会。01 年より文化放送ラジオ「浜美枝のいつかあなたと」日曜10:30 ~ 11:00 出演中。農林水産省などの各審議会委員として「農・食・文化の継承」について積極的な活動を展開中。10 年4月近畿大学総合社会学部客員教授就任。著書に『凛として、箱根暮らし』(主婦の友社)他多数。「箱根やまぼうし」のイベントの詳細はhttp://www.mies-living.jp をご覧ください。浜美枝さんのブログhttp://blog.hamamie.jp。


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