遊びをせんとや生まれけむⅡ

文=中村敦夫

喋る人ほど落馬する

落馬に逆らうと 大怪我をする

 

前号では「馬」について書いたが、もう少しだけつけ足そう。

乗馬ができるようになったのは、 馬賊が主人公のTVドラマ「水滸伝」の撮影である。私とレギュラー の若手俳優たちは、正式な乗馬レッスンを受けることなしに、毎日の実践でマスターしていった。

馬は気難しい。乗り手の腕前を値踏みしたりするので、思い通りに操るのは楽ではない。走っている最中、急に首を下げたり、いきなり進路を直角に変えたりする。どんな名手でも、落馬をゼロにするのは不可能だ。当初は私も、二日に一度は落ちていた。

そこで学んだことは、大きくバラ ンスが崩れた時は、覚悟することだ。そして、落ちても安全な場所をギリギリまで捜し、自ら手綱を放すのである。落馬に逆らうと大怪我をし、動きに従えば軽くて済む。

ところで、撮影中、俳優たちに面白い傾向が表れることに気がついた。

週替りで、新しいゲスト・スターが登場する。たいていは先輩俳優たちだが、撮影前に若手俳優を集め、乗馬に関するうんちくを傾けることが多かった。奇妙なことに、喋る人ほどあっさりと落馬した。中には、片足を鐙(あぶみ) にかけ、馬の背にまたがろうとして、反対側に墜落する人もいた。乗馬する前の落馬だ。

なかむら あつお

元参議院議員、俳優、作 家、脚本家。1940年東京 生まれ。東京外国語大学 在学中に演劇に興味を持 ち、大学を中退、劇団俳優 座に入る。65年にはEWC 奨学生演劇部門試験に合 格、ハワイ大学に留学し、アメリカ社会の研究を する機会を得る。72年に出演したテレビドラマ「木 枯し紋次郎」が空前のブームになりその後数多く のドラマで主演を務める。84年にはテレビ「地球 発22時」でキャスターを務める。現在、日本ペンク ラブ理事、環境委員を務める。著作に『チェンマイ の首』『ジャカルタの目』『マニラの鼻』『ごみを喰 う男』『暴風地帯』『簡素なる国』など。

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