新・日日是好日

文=帯津良一

的中の予感

金的を射止めたわが病院の才女

 

 私の病院でがん患者さんの心理療法を担当していたF女は学問への情熱抑えがたく、京都大学の大学院を経て東京大学の助手として学問に励んでいた。頭はたしかに良い。とりわけ私が買っていたのは彼女の英作文の力だ。なんとも格調の高い英文を書くのである。
 
 英語の苦手な私でも英文で論文のサマリーを書いたり、海外で英語で講演する機会はそれなりにある。その都度、彼女の力をお借りするのである。謝礼は、彼女が酒好きなこともあって、一献をもってこれに当てて来た。そしてある時、いつまでも助手では仕方がない。そろそろ どこかに大学の准教授になって転出しなければ、ということばが唐突にを衝いて出たのである。
 
その際私に予感という意識はまるでなかったが、それからしばらくして彼女からの電話である。京都大学の准教授に任命されて来月赴任するという。ならばあれは予感だったのかという思いが脳裏を掠めたが、何はともあれ、祝いの一献と相成ったのである。

「……ところで京都大学のどこの准教授なの……」

「それが、あの山中さんのところなですよぉ……」

「えっ! あの例のiPS細胞のぉ?」
 
 あのiPS細胞研究所が、いよいよ臨床に進むことになって、臨床心理士が必要になり、全国公募をしたのである。そこへ彼女が応募したところ、見事に金的を射止めたということなのである。

……続きはVol.36をご覧ください。

おびつ りょういち

帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会名誉会長。1936年埼玉県生まれ。61年東京大学医学 部卒業。東京大学医学部第 三外科医局長、都立駒込病 院外科医長などを経て、82 年帯津三敬病院を開設し院長。西洋医学だけでなく、中国医学、ホメオパシー、代替医療など様々な療法を駆使してがん診療に立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学の確立を目指している。 新刊は『毎日ときめいていますか?』(風雲舎)など。講演会、養生塾などの開催については、 http://www.obitsusankei.or.jp/ をご覧ください。

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