cinema『アウトレイジ 最終章』

監督の頭の中の一部を垣間見せられたような濃厚な時間

 

文:川口力哉

 

北野武の言う〝確信犯〟の真意とは

 

ある時、(ビート)たけしさんが、「どうせワルをやるなら確信犯がいいな」とポツリと呟いたことがあった。ちょうど5年前の暑い夏の夜だったと記憶する。あれから何度、〝確信犯〟という言葉を思い出したことだろう。もちろん表面的な言葉の意味は知っているつもりだ。でもあの時、たけさんが言った〝確信犯〟の真意が、この映画の中には埋め込まれているに違いない。

試写会場を出てすぐ、吸い込まれるように乗り込んだ地下鉄の車内でそんな物騒なことを考えてみた。人の頭の中を決して覗くことはできない。でも映画が監督の頭の中で創造されたイメージの具現化だとすれば、本作は北野武監督の頭の中の一部を覗いているようなものである。言葉で表せば確信犯。きっと北野監督は本物のヤクザは確信犯であるべきだと考えているのではないだろうか。刑事がやって来ようが、日本最大の暴力団の幹部が来ようが、顔色一 つ変えずに飄々と立ちまわる大 友 ( ビートたけし ) の姿は確信に 満ちている。「誰が相手だろうが、俺は俺。敵に回したら最後。地獄の果てまで追いかけるよ。あんた、覚悟はできてるんだろうな」そんなオーラがプンプン漂っているのである。

こんな光景を見たことがある。 あるスポーツ新聞の映画大賞の授賞式のこと。北野監督はメインテーブルの近く、一人でそこに立っていた。監督を中心に半径2メートルはあっただろうか。誰もが監督に熱い視線を送りながら、誰もその円の中へは入っていけない。お付きの人もいない、マネージャーもいない、誰もガードしていないにも関わらず……。

 

 監督の考える人生観を役に魂を込めて演じる俳優陣

 

さてそんな北野監督に選ばれた キャスト陣、北野組の常連と新顔が役者生命のすべてをかけてバチバチ火花を散らし合うものだからもうたまらない。冒頭のワンシーン。大友が仕切る韓国済州島のシマ内でトラブルを引き起こした花菱会の幹部花田 (ピエール瀧 ) がベッドにふんぞり返っている。大友相手に凄みをきかせる花田は、役者が芝居で演じたと分かる面の皮の薄いヤクザではなく、中身までしっかり本物に染まったヤクザにしか見えず、まず初めに作品への信頼度がぐっと高まったことを明記したい。

前作でも話題となった花菱会若頭補佐を演じる塩見三省は前に増して、これが極道の執念というものだろうか、全身全霊の凄みがフィルムを通じて滲み出ていた。同じく繁田刑事を演じる松重豊の〝刑事の美学〟を感じさせるストイックな存在感も絶対見逃すことはできない。

そんな際立った存在感を放つ役者たちが演じるワンシーン、ワンシーンに、北野監督の考える人生観、つまり「こんなタイプの人間 人生は最後こうなるんだよ」というメッセージが反映されている事を考えると、きっと監督の言う〝確信犯〟の真意が見えてくることだろう。地下鉄を降りた頃、〝確信〟とは〝覚悟〟と同義だと、一人思ってみた。

©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会

『アウトレイジ 最終章』

監督・脚本・編集:北野武/音楽:鈴木慶一/

出演: ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、 大杉漣、塩見三省、白竜、名高達男、光石研、原田泰造、 池内博之、津田寛治、金田時男、中村育二、岸部一徳

10月7日(土)全国公開

配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野

かわぐち りきや

俳優。1975年和歌山県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。主な出演作は映画『THE GODDESS OF 1967』(オーストラリア映画)、『李歐』の主演をはじめ『凶気の桜』『阿修羅のごとく』『タッチ』『テニスの王子様』 『スマイル 聖夜の奇跡』『龍三と七人の子分たち』、 テレビ「もっと恋セヨ乙女」「危険な関係」「芋たこなんきん」「ヤスコとケンジ」「行列48時間」「ギルティ 悪魔と契約した女」「白虎隊」、舞台『座頭市』など。 著作に小説『ピースマン』がある。現在、世田谷深沢に開校した、小中生を対象とした未来創造スクール「GREEN STAR」の代表を務める。


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