Stage『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

『ハムレット』では 日の目を見ない 二人組が
主人公の スピンオフ作品

 

文=萩原朔美

 

 翻訳を兼ねることで演劇の芯の部分を握る演出家

 

劇団に所属している劇作家だと、舞台に立つ役者の演技を想像しながら書くことが出来る。だから、極端に言えば太った人には太った役を与えられる。

シェイクスピアもその一人だ。 グローブ座の座付き作家だからい つも役者を念頭に 37 本の戯曲を書 き下ろしていたのである。

演出家はどうだろうか。役者の演技を見て、役者に合わせたセリフを書き変えることは出来ない。 劇作家によっては一字一句直しては困るという人もいるのだ。

演出家小川絵梨子の仕事を見ていると、例えば2010年のサム・シェパード作『今は亡きヘンリーモス』のように翻訳と演出とを兼ねていることが多い。これは演出家にとってとても重要で素晴らしい方法である。演出家が、役者の 個性を引き出しテーマをも生かすために、戯曲に手を入れられるからである。

今回のトム・ストッパード作 『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』も、やはり翻訳・演出となっている。ここが豊かで奥深い舞台を生み出すポイントだろう。演劇の芯の部分を演出家が握っているということはとても大事な事である。
 

演劇性とエンターテインメント性を 両立させるストッパード

 

このストッパードの作品は、『ハムレット』の最後の場でホレーシオがるとギルデンスターンとロー ゼンクランツは?」
  と聞くとハムレットが

「そう、このやとわれ仕事に惚れて心中したのだ」

と軽蔑して答えた二人が主人公なのだ。国王に頼まれてハムレットの憂鬱の原因を探り、結局は虫けらのように殺されてしまう哀れな二人。その二人に光を当て、別の角度から『ハムレット』を眺めたスピンオフ戯曲という訳だ。

ジョン・マッデン監督の『恋におちたシェイクスピア』で脚本を担当したストッパードは、やはり同様の手法で『ロミオとジュリエット』を題材にしている。役者を志しているが女であるために舞台に立てない令嬢と、妻帯者であるシェイクスピアが恋に落ち、舞台を成功させるが結局は涙をのん別れるしかない。その体験がシェイクスピアに『十二夜』を書かせたという奇想天外なストーリーだ。 元の戯曲を生かしながら、全く別の物語を生み出すところがストッパードの凄さだろう。

配役は生田斗真と菅田将暉。まで上演された二人組は日下武史 と笈田勝弘、角野卓造と矢崎滋、 生瀬勝久と古田新太、石橋徹郎と浅野雅博だ。想像しただけで面白さの分かる配役の妙だ。二人のやり取りの滑稽さと、その先の悲しみが見どころだ。本作はストッパードが監督して映画化もされている。 演じたのは、ゲイリー・オールドマンとティム・ロスである。なんとなく、今回の二人のコンビネー ションが似ていて面白い。楽しみな舞台である。

WEB用素材ヨコ

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

世田谷パブリックシアターにて 10月30日~11月26日

:トム・ストッパード/翻訳・演出:小川絵梨子

出演:生 田斗真、菅田将暉、林遣都、半海一晃、安西慎太郎、松澤 一之、立石涼子、小野武彦 ほか

料金(税込):S席10,000円、A席8,000円、B席6,000円

〔住〕世田谷区太子堂4-1-1キャロットタワー3F

[問〕シス・カンパニー03-5423-5906(平日11:00~19:00)

[HP]http://www.siscompany.com/rosen/

※当日券あり(要問合せ)

はぎわら さくみ

エッセイスト、映像作家、演出家、 多摩美術大学名誉教授。1946年、 東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年 から70年まで寺山修司主宰の演 劇実験室・天井棧敷に在籍。76 年には「月刊ビックリハウス」を創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』『演劇実験室・天井棧敷の人々』『毎日が冒険』『小綬鶏の家』(母・萩原葉子との往復書簡)、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』『劇的な人生こそ真実・私が逢った昭和の異才たち』などがある。2016年、萩原朔太郎記念・水と緑と詩の町 前橋文学館の館長に就任。


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