Musicメロディ・ガルドー 『ライヴ・イン・ヨーロッパ』

アーティストの 心が詰まった心を揺り動かすCD

 

文=立川直樹

 

聴く者を酔わせるレジェンドたちの名盤

 

 どれをメインに書いたらいいんだろうと悩んでしまうくらいに素晴しいCDが4枚並んでいる。
 
 アメリカの音楽業界にその名を刻んでいるレジェンド、ジョニー・ キャッシュの死後発見された詩や手紙をもとに編纂された未発表詩集『 FOREVER WORDS: THE UNKNOWN POEMS 』から選ばれた詩に、盟友ウイリー・ネルソン を筆頭にクリス・クリストファーソン、アリソン・クラウス、エルヴィス・コステロ、T・ボーン・バーネット、カーレン・カーター……といった様々なアーティストが曲をつけて歌ったプロジェクトのCD『フォー エヴァー・ワーズ』。
 
 そのCDのオープニングを飾っている「フォーエヴァー/アイル・ス ティル・ミス・サムワン」をクリス・クリストファーソンとデュエットしているウイリー・ネルソンの最新 作『ラスト・マン・スタンディング』も 85 歳という年齢が信じられないほどのエネルギーで〝時の儚さ〟を受け入れながらもこの世界がもたらす 喜びや美しさを歌い上げ、音楽の持つパワーの深さで聴く者を酔わせてくれる。

  アイルランドが生んだ孤高のシンガー・ソングライター、ヴァン・モ リソンがオルガンの巨匠にしてトランペットの達人、ジョーイ・デフラ ンセスコと共演して、ジャズ・スタンダードやブルースの名曲、ヴァン自身の過去の楽曲をグルーヴ感あふれるアレンジで熱唱する『ユーアー・ ドライヴィング・ミー・クレイジー』 も、これぞ名盤! と太鼓判を押せる大傑作だ。

 

奇跡のシンガー・ソングライターメロディ・ガルドー

 

 そして最後に登場するメロディ・ガルドーは、今までに紹介した3枚のCDのアーティスト達に較べると、32 歳とぐっと若く、一般的な知名度は決して高くないが、2枚目のライヴ・ベスト・アルバム『ライヴ・イン・ヨーロッパ』を聴いて、僕はその魅力とクオリティの高さに脱帽させられた。

  フランス語を流暢に操るアメリカ人ジャズ歌手のメロディがヨーロッパ各地で行ってきた300公演以上におよぶライヴ音源から、自身で厳選した 17曲は〝魅力〟というよりもある種の〝凄味〟すら感じさせられるものであり、歌手としてもソングライターとしても、超一流の才能の持主であると思う。

  19 歳の時に交通事故で重傷を負い、リハビリのために曲を書き始めたことがミュージシャンになるきっかけとなったことで〝奇跡の女性シンガー・ソングライター〟と呼ばれているメロディだが、そのパフォー マンスがもう奇跡と呼ぶにふさわしいものであり、一糸まとわぬ後姿の 写真を使ったジャケットの中に収められたブックレットに載っているメロディの言葉がそこにシンクロしてくる。

「完璧さというのは、我々人間が常に理想として追い求めているものです。全世界の人々全てのセンスに合うものがあり、美しさやそれを作り出すものが普遍的であるかのように。しかし、素晴しいアートの概念は、受け取り手とその人の〝バラ色 の眼鏡〟が曇っているか、クリアな のかで違ってくるということを、時間と私たちの常に進化するマインドが教えてくれるでしょう」というのはけだし名言。

「このアルバムの存在意義は気持であり、ノスタルジアであり、思い出 なのです」というメロディは凄腕のミュージシャンたちと型にはまらない、粋でヒップなパフォーマンスで 酔わせてくれる。

メロディ・ガルドー画像

メロディ・ガルドー 『ライヴ・イン・ヨーロッパ

UCCM-1243/4  3,000円+税
発売元:ユニバーサル ミュージッ

たちかわ なおき

音楽、映画、舞台、美術、出版など幅広いジャンルで活躍するプロデューサー&ディレクター。伊丹十三、篠山紀信、横尾忠則、久石譲、ピエール・バルー、ミック・ロック、和田誠、鋤田正義など各界のアーティストの映画音楽から展覧会までプロデュースを手がける。ジャンルをかけ合わせるメディア・ミックスやロックとオーケストラのコラボレーションなどでは独自の手法で高い評価を得ている。著書に『シャングリラの予言(正・続)』(森永博志氏との共著)、『セルジュ・ゲンスブールとの一週間』『父から子へ伝える名ロック100』『TOKYO1969』など多数の著書がある。


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