大平台の水と温泉

文=山口由美

洋館の邸宅がデイスパとしてよみがえった(写真提供:スパ アット ヤマグチハウス)

箱根は独自の水源を 持つ〝水の里〟

 

箱根で生まれ育った私が、東京に出 て一番嫌だったのは、水が美味しくないことだった。

当時は、まだ今のように、当たり前 にペットボトルの水を飲む時代ではな く、水道水の味に私は辟易としたのである。

ことさらにそう感じた理由は、私が 大平台の出身だったからかもしれな い。

大平台は、箱根の中でも、昔から水がよいことで知られている。それを物 語るのが「姫の水」である。

 豊臣秀吉が小田原攻めのため、箱根 山に陣を築いた時、姫君の化粧水とし て使われたと伝承される湧き水。今も 民家の庭先にこんこんと湧き出てい る。

 私が幼い頃から飲んでいた大平台の 水道水は、姫の水ではないが、大平台 地区の独自水源による山の水である。

そのことを改めて知ったのは、東日 本大震災の時だった。原発事故の影響 で、人々が水道水に不安を感じ、パニッ クになったあの頃、ふと気になって調 べてみた。すると、箱根の水道で、浄 水場を水源とするのは一部の地域であ り、大平台をはじめとした多くの地区 は、独自の水源を持つことがわかった。 箱根は、水の里なのだ。豆腐や湯葉が 名物なのも、ひとえに水の良さゆえで ある。(続きはVol.31をご覧ください)

やまぐち ゆみ

1962年箱根町生まれ。旅行作家。『箱根富士屋ホテル物語』『アマン伝説』『一度は泊まりた い粋な宿、雅な宿』など著書多数。自宅を改装したスパ アット ヤマグチハウスのオーナーでもある。


新着記事

おすすめ記事

児玉清さんが遺したことば

浜美枝さんの箱根

Present

WEB限定プレゼント

Category

from Readers

Club