画家に戻り 心を癒す場所

文=八代亜紀

箱根は私の 第二のふるさと

 

私にとって歌は命、絵はそれを支え る精神です。

父は画家を目指したほど絵が好きで、私も4歳の頃から絵画教室にも通って、画家になることが夢でした。 絵画教室では一番幼く、上級生に交じって写生に出かけるとき、最前列で白い髭の先生に手を引かれて行く光景を今でも覚えています。

箱根にアトリエを持ちたくて随分探しましたが、念願の強羅にアトリエを作ったのは20年以上前です。以来、月2 回、3日から4日の滞在で箱根に籠ります。このスケジュールは何をおいても最優先。季節ごとに鋏とカメラを持って花を摘みに行き、アトリエには 窯もあり陶芸をやる主人のつくった陶器に花を生け、「光と影」をじっくり観察して緻密に色を重ねます。

私の作風は写実的なルネサンス期の手法です。毎年5ケ所ほどで個展を開きますので、年間最低でも100点は描かなければなりません。箱根を下りてコンサートや番組出演をしたあと、絵の具の乾いた頃に戻るので、色を重ねるのにとてもいいリズムなのです。ですから箱根との距離感は、歌手・八 代亜紀と画家・八代亜紀のリズムがぴったり合うのです。

箱根は富士山が望め、温泉もあり、 食べ物も美味しいし、月も星もきれい。 東京からわずか1 時間ちょっとの距離なのに、森があって、朝は鳥のさえずりで目が覚めます。冬、夜中にキャンバスに向かっていると、「ホー、ホー」 というミミズクの鳴き声がして、それを真似て私も「ホー、ホー」と。ミミズクたちの会話の中に入ると、一瞬シーンとなって、ミミズクと遊んでいるようで、童心に帰れるひとときです。

‥‥‥続きはVol.35をご覧ください。

「良い絵を描くには焦ってはいけない」と丁寧に色が重ねられていく

やしろ あき

1971年デビュー。「愛の終着駅」「もう一度逢いたい」 「舟唄」等数々のヒット曲を出し、80年「雨の慕情」で第22回日本レコード大賞・大賞受賞。98年より画家の登竜門と言われる世界最古の美術展、フランスの「ル・サロン」で5年間入選を果たし永久会員になる。15年11月〝はこね親善大使〟、16年には〝日本モンゴル文化大使〟も任命され、モンゴルとの文化交流にも貢献している。


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