高橋惠子

2017年、私の舞台活動はケラリーノ・サンドロヴィッチさん作・演 出の『陥没』から始まります(2017年2/4~2/26、Bunkamuraシアターコクーン 問:03-3477-3244)。『東京月光魔曲』『黴菌』と、昭和 の東京をモチーフに作品を発表し、「昭和三部作」を目指したケラさん(と、親愛の情を込めて呼ばせていただきます)の完結編となる作 品です。私は前回の『黴菌』にも出演させていただいていますが、今回7年ぶりとなるケラさんとのお仕事です。

ケラさんは、いわゆる当て書きという、演じる俳優の質をごらんになりながら役を創造していく方で、本ができあがっていても稽古場での様子を見ながら、 役のキャラクターが変わっていくということもあります。私の中 に潜在するものをよく観察していらして、私自身が気づいていない 私の部分を引っ張り出してくださいます。それが、面白かったです ね。役を演じながら自分自身の新たな一面に出会うことがあります。

今回は東京オリンピックを2年後に控えた昭和37年の東京が舞台。 前作から7年、その間、私が積み重ねてきたものもあれば、失くしてきたものもあります。同様に、ケラさんにも変化があったと思います。あのときとはまた違う新たな私を引き出していただけて、そ の役にどんな風に向き合えるのかが楽しみです。私が意欲的に心が 舞台に向かうようになったのは、1997年に出演した蜷川幸雄さん演出の『近松心中物語』がきっかけです。

平幹二朗さんと太地喜和 子さんの舞台がすばらしく、太地さんがおやりになった梅川の役を 演じさせていただけるというのは女優としては、とても身に余ることですが、当時、子供もまだ小さく、長期間、家を空けるということはできないと思い、お話をいただいたときに最初はお断りしました。 すると夫が、これから先、映像ではもう使いものにならなくて舞台 をやりたいと思っても、そのときに声をかけていただけるかどうかはわからないんだよ、これはチャンスだからやったほうがいいと、 背中を押してくれました。

本音を言えば、とても演じてみたい役で、 関わりたい作品でした。初日、舞台のソデで、心臓の音が客席に聞 えるんじゃないかと思うほどドキドキしながら出を待っていたんですが、覚悟を決めていよいよ舞台に登場すると、大向こうからお客 様が「タカハシ!」って声をかけてくださって、もう本当に嬉しく、 お客様に受け入れていただけたのだと、ありがたいと思いました。

舞台の醍醐味は、お客様との気のやりとりだということを初めて経験した、そして俳優はお客様に支えられてこそ、というのを肌で感 じた瞬間でした。それでも、所作一つとっても知らないことだらけで、まだまだ自分が思ったようにはできていないなというもどかしさというものは感じていまして、もっともっと勉強したいと思いました。

すでに舞台の魅力にとりつかれていたのかもしれないですね。 ありがたいことにその後も、蜷川さんはじめ、才能豊かなさまざまな劇作家の方々、演出家の方々から声をかけていただき、大劇場か ら小劇場までいろいろ経験させていただき、そのすべての作品が 現在の女優・高橋惠子の血となり、肉となっていると感じています。 いろいろな経験を通して「高橋惠子」という人間を磨いていきたい という気持が、私の心を次の舞台に向かわせるのかもしれません。 俳優という仕事は、いろんな作品や人に出会い刺激を受けることで、 自分を磨く機会を与えていただける職業なのかもしれないですね。

_MG_4505

_MG_4494

「自分自身にもっと磨きをかけたい。 その気持が、私 の心を次の舞台に 向かわせるのかもしれません」

2016年11月28日 東京・新宿 ハイアット リージェンシー 東京にて  撮影:言美歩 


新着記事

おすすめ記事

児玉清さんが遺したことば

what a beautiful time

浜美枝さんの箱根

Present

WEB限定プレゼント

Category

from Readers

Club