昭和の二枚目俳優の貌

~早田雄二の写真に写る自然体の男たち~

名優として 語られる俳優たちとは 別に、 〝二枚目〟俳優と呼ばれる男たちがいた昭和のスクリーン。
今で言うところの〝イケメン〟とは似て非なる存在。 現在の〝イケメン〟の間口が広いのに対して 〝二枚目〟の門は狭かった。
個性派というような 言い訳がましい形容を必要としない 男たちだけに与えられた称号である。 もちろん、名優にして二枚目も多く存在した。
映画史に残る数々の作品で主役を張った 森雅之、上原謙、三船敏郎、佐田啓二、 鶴田浩二、高倉健、石原裕次郎たちも 二枚目という冠をいただく俳優として 認識されるが 映画史の中で語られることは 少ないものの、 女性たちの熱い視線を集める美しい男たちが存在していた。
早田雄二の写真に遺された若き二枚目の貌をご紹介しよう。

文=萩原朔美

佐田啓二
大正15年生まれ。早稲田大学卒業。松竹大 船メロドラマのトップ二枚目で、岸惠子と共演し た『君の名は』三部作で、人気の頂点に達した。 バラリと額に垂らした前髪、憂い顔は多くの女性 の心をとらえた。昭和31年の『あなた買います』 では、キネマ旬報、ブルーリボン賞、毎日映画コ ンクールの主演男優賞を受賞し、演技者である ことも証明した。小津安二郎監督、木下惠介監 督に可愛がられ小津組では『彼岸花』『お早よう』 『秋日和』『秋刀魚の味』など、木下組では『お 嬢さん乾杯』『日本の悲劇』『遠い雲』『喜びも 哀しみも幾歳月』『風前の灯』『永遠の人』など に出演のほか、『本日休診』『この広い空のどこ かに』『人間の條件』『甘い汁』などでも存在を 示した。NHK大河ドラマ第1作「花の生涯」にも 出演し、昭和39年、避暑先の蓼科高原から、出 演中のNHKドラマ「虹の設計」の撮影のため帰 京の途中、交通事故で死去。37歳の早すぎる死 だった。長女は中井貴恵、長男は中井貴一。

鶴田浩二 大正13年生まれ。松竹大船の現代劇では不良っぽさも感じさせる甘い美貌で、二 枚目のエースとして女性ファンを魅了し、東映では任侠映画の大看板としていかつい 男たちの心をとらえてしまった。甘さと翳りを兼ね備えた風貌のアイドルは、いつしか 哀愁を漂わせた渋い魅力をまとうことになる。松竹時代は、佐田啓二、高橋貞二と共 に〝青春三羽烏〟と謳われ、雑誌「平凡」の人気投票や、ブロマイドの売上で1位とな るなど、昭和20年代最大のアイドルだった。岸惠子と共演した戦後初の海外ロケ映画 『ハワイの夜』は大ヒットとなり、2人の仲は戦後最大のロマンスと騒がれた。各映画 会社の作品に出演したフリーの時代を経て専属となった東映では『人生劇場 飛車角』 を大ヒットさせ、任侠映画ブームを起した。『本日休診』『お茶漬の味』『雲流るる果 てに』『ギャング対Gメン』『次郎長三国志』『あゝ同期の桜』『人間の証明』『総長の 首』『連合艦隊』と、甘い二枚目、軍人、ギャング、侠客と、現代劇から時代劇まで幅 広く活躍した。また、左手を耳に添えて歌う独特のスタイルで「傷だらけの人生」も大 ヒットさせ、山田太一脚本のドラマ「男たちの旅路」シリーズでテレビでも人気者であっ た。昭和62年死去。

高倉 健 昭和6年生まれ。東映時代の初期には、後の寡黙なイメージの〝健さん〟というより、アクショ ン、喜劇、ギャング、刑事、青春映画とさまざまな現代劇に出演し、トッポい姿や、直情的な 部分もみせていた。『人生劇場 飛車角』以降、任侠映画を中心に活躍、ストイックなイメー ジを確立させ、『網走番外地』シリーズ、『昭和残侠伝』シリーズをヒットさせた。東映時代に は『森と湖のまつり』『飢餓海峡』『新幹線大爆破』などに出演。フリーになり主演した『八甲 田山』『幸福の黄色いハンカチ』で第1回日本アカデミー最優秀主演男優賞と、ブルーリボン 賞、キネマ旬報、毎日映画コンクールの主演男優賞を受賞。日本アカデミー賞では計4回最 優秀主演男優賞を受賞している。『ザ・ヤクザ』『野性の証明』『遙かなる山の呼び声』『駅 STATION』『南極物語』『居酒屋兆治』『夜叉』『ブラック・レイン』『あ・うん』『四十七人 の刺客』『鉄道員 ぽっぽや』『単騎、千里を走る。』など記憶に残る多くの作品に主演。平成 26年死去。遺作は205本目の出演作となった『あなたへ』。文化勲章も受章した、日本男子 の生き方を美学として魅せた二枚目だった。

田宮二郎/小林 旭

三船敏郎/石原裕次郎

白いシャツ、きちんと結ばれたネクタイ、七三に分けられた端正な髪型、それに舶来の腕時計、あるいは輸入タバコ。

これが、昭和を代表する男優スター たちのおもなアイテムだった。昭和が 生み育んだ写真家、早田雄二が遺した スターたちの華麗な姿を見ればよく分かる。

滝の水筋のようにクッキリと浮かび 上がる髪の櫛あと。腕に鎮座している 大きめの時計。柔らかい煙を周囲にた なびかせている紙巻き煙草。首に纏わ りつい
ているきりっとしたネクタイ。 スクリーンのように輝く白いシャツ。

ところが、ネクタイ以外どれをとってみても、今や絶滅危惧種のオンパレードだ。

煙草は嫌われものの代名詞だし、七 三に分けた髪型はほとんど街で見かけ ない。ポケットの中の櫛や、洗面所に あった匂いのきついポマードなど、み んなほとんどその姿を消してしま た。

昭和と平成の両岸の間には、大きて深い河が流れているようなのだ。

……続きはVol.30をご覧ください。


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