街へ出よう

文=太田和彦

皇居訪問

~歴史の杜で日本を想う~

 

長禄元年(1457)に太田道灌によって 創築された江戸城は︑明治維新後皇居となり、
昭和 38 年(1963)には「特別史跡江戸城跡」に指定された。
お濠の向こうに聳え立つ櫓や橋の美しい景観を目にしても、その中を歩いたことがある方は意外と少ないのではないだろうか。
そこは、戦国時代の面影を残す堅牢な城門や石垣、 江戸幕府の象徴として存在した天守閣の跡があり、大奥跡や、忠臣蔵の名場面・江戸城本丸松之大廊下跡など、歴史の宝庫なのだ。
豊かな緑に包まれた皇居は、高層ビルが建ち並ぶ都心にあって、別天地の様相をみせる。
四季の彩を感じながら、皇居を歩いてみよう。

伏見櫓は江戸城築城の第2期(第3代将軍家光の時)に 都の伏見城から移築されたものと言われている。櫓の高さは約13.4mほどもある。

 東京の中央にある皇居は、敷地の西が天皇のお住まい「御所」のある「吹上御苑」、東が江戸城のあった「東御苑」 で、全体を外堀が囲む。西の半蔵門 あたりから、外堀の豊かな水と御苑の 緑を手前に丸の内の高層ビル群を見るのは日本屈指の、いや世界にも少ない、 自然と現代が併存する眺めではないだろうか。
 
 皇居の入場門は、南に桜田門、東 坂下門・桔梗門・大手門、北に平川門・ 北桔橋門・乾門、西に半蔵門がある。 皇居外苑広場から続く坂下門に立った。東京に五十年以上住んでいるが皇居に入るのは初めてだ。

国の安定を象徴する フォーマルなたたずまい

  いかめしい「皇宮警察本部坂下門 衛署坂下門警備派出所」で入場証を預かり中へ。ここからは白い砂利道と豊かな緑、青空の他は何もない。

 時まさに五月。全身を青葉に包まれた大樹は光り輝き、根方の植栽もまた。やや上り坂の広い道は足裏に心地よく、おのずと歩みはゆっくりになり深呼吸を繰りかえす。坂下門前では聞こえていた都会の喧騒もいつしか遠く消えた。

 右手の昭和十年築、建物は西洋古典風、屋根は銅葺き和風の帝冠様式 三階建ては宮内庁庁舎。そこから左にまわり上がると、左右百六十メートルと長大な宮殿の「長和殿」になり、 前は切石が整然と敷き詰められた広大な広場だ。毎年一月二日の一般参賀では殿の前に特設スタンドを建てて皇族が並び立ち、参賀に応える。いつもこの光景をテレビで見て正月を実感し、国の安定を確認する。

 平屋建ての長和殿も屋根は銅葺きで緑青が鮮やかだ。ばくぜんと皇居の建物は瓦屋根の和風を想像していたが、屋根はもとより寺社風でも神社風でも、趣味的な庭園でもなく、これがフォーマルということだろう。取り囲む森は枯れ枝一本なく、植栽は刈り込みが行き届き、広大な広場は落葉一枚ない。毎日の清掃の行き届きが見え、さきほども緑のジャンパーの勤労奉仕団体の方々が帰ってゆかれた。

……続きはVol.36をご覧ください。

おおた かずひこ

 グラフィックデザイナー・作家。 『太田和彦の東京散歩、そして 居酒屋』(河出書房新社)他。

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