名店のランチ寿司

~気軽に食べて、粋に楽しむ~

 

街の屋台で、握り寿司が供されるようになったのは江戸時代後期。
いつしか、寿司は特別な日に食べる高級なものとなってしまった。
初めてだと、かしこまり、緊張してしまいそうな名店の寿司屋。
しかし︑実際には気さな雰囲気で、ランチで食べる寿司ならお値段も良心的だ。
ちょっと気取ってカウンターに座り、寿司職人の手から 渾身の一貫が出来上がっていく過程を見ることは心躍る。
会話が弾めば、心も晴ればれするだろう。
寒い冬は脂がのった魚が、一番おいしい季節である。

居酒屋派を自認する私の寿司体験

 

寿司ほどおいしいものはないが 一流店は値段が張る。よって、回転寿司かスーパーの寿司パックだが、こればっかりでもなあ。酢飯に刺身をのせただけのとはちが、名店の本格江戸前寿司は寿司種に合わせた「仕事」がされているそうだ。

私とて本格店を知らないわけではない。夜の寿司屋に入ると、滅多に来れない高揚感もあってか、 まず酒を頼み、何かつまみをおまかせで取って一杯やりながらそれ を楽しみ、だいぶたってから「そ ろそろ握って」「はい、何からいきましょう」と、ようやく握りに る。すでに腹はできているから、 五、六貫でお終いだ。

居酒屋派の私だが、これでは勿体ない。寿司屋では酒を控えてお茶を頼んで次々に握ってもらう。 それも順番を考えて、ハイライトの小鰭、穴子はいつにするか念頭 に置きつつ(おおげさです)白身あたりから始める。

付け台に置かれたら即、口に入れ、そしてお茶を含んで口をきれいにして次に備える。どんどん注文するので職人の動きはリズミカルになり、肩を揺すって楽しそうだ。最後にかんぴょう巻にすると、 「はい、お茶さしかえ」と大きな 声がとぶ。およそ三〇分で終了だ。たまには「おまかせで、一〇 貫くらい握ってください」という時もある。そして「トロとウニはいらないです」と付け加える。値段が高いからではなく(それもあるが)、寿司としてつまらないという気持ちがある。大好きな巻ものは鉄火巻とかんぴょう巻の両方をとる時もある。

以上、私の貧しい寿司体験です。

(‥‥‥続きはVol.34をご覧ください)

おおた かずひこ

 グラフィックデザイナー・作家。 『太田和彦の東京散歩、そして 居酒屋』(河出書房新社)他。


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