玉川大学発/LEDレタス

ハイテク野菜づくりが
ビジネスになった
玉川大学

 

 

 

~新しい食料生産に取り組みながら学ぶ[先端食農学科]の成果~

 

都心にほど近い緑豊かなキャンパスから、
天候や季節に左右されることなく、
毎日7種類約2,500株もの新鮮なレタスが出荷され、
完売していると聞いたら、どんな農場を想像するであろう。
すべての既成概念を覆す最新かつ壮大な農業が
玉川学園のキャンパスで実現されている。

文=樽谷哲也 撮影:福山楡青

フリルレタスとフリルルージュは、スタ ンダードのものと、ボリュームの あるファミリー向けのプレミアムがある。 どちらもサラダはもちろん炒め物にも。 柔らかくサンドイッチなどにも適したグリー ンリーフ、レッドファイヤーの他、シーザー 玉川大学サイテックファーム(植物工場)では、種まきから発芽、LED光源による栽 サラダに適したロメインレタスの7種

フリルルージュプレミアムは、ボリュームもあってファミリー向けに最適

なぜ玉川大学産レタスの事業化が軌道に乗ったか

 
   生みの親にして現在も指揮をとるのは、玉川大学・農学部先端食農学科の渡邊博之教授である。農学の専門家として民間企業で研究にあたっていた1992年に、アメリカのNASAで、太陽光の代わりにLEDを照射して植物を栽培する研究が進められていることを知った。

  「衝撃を受けました。植物の将来を、そして農業の未来を変えることができる可能性を感じました」と振り返る。

   2003年に玉川大学の教授に迎えられ、キャンパスの片隅の小さな一角で、LED光源による野菜栽培の研究を始めた。創意工夫と試行錯誤を重ねながら実用化に至り、LEDを光源とした水耕栽培による屋内農園「サイテックファーム」が2012年10月、西松建設との産学連携のもとに完成する。翌年の2月から3種類のリーフレタスを「夢菜(ゆめさい)」というブランドで売り出し、小田急商事が展開するスーパーマーケット「Odakyu OX」で販売され、地域の人びとに浸透していった。リーフレタスが商品化された7年前に同様の取り組みをした他業種の多くは、しだいに採算割れとなって撤退。光環境を厳密に管理し、品質の高さをキープした玉川大学産レタスは消費者の信頼を得て栽培の規模も大きくなり、事業化が軌道に乗っている。

  「野菜を都会で作っているということが大きな利点になっています。小田急沿線を中心に、都心の新宿、神奈川へと、安全安心で高い鮮度を保ったまま、出荷から数時間で行きわたるからです。いま問題になっている食品ロスも極めて少なくなります」

   完全閉鎖型LED農園で、苗の植え付けから収穫まで、オートメーション化が図られている。クリーンルーム・無農薬栽培による厳格な品質管理で生産、出荷される。食べる前に水道水で洗う必要がなく、高品質で高栄養価、食物繊維を豊かに持つ。露地栽培の野菜と違って、雑菌が極端に少ないため、葉先から変色しり、腐ったりしない。高度なパッケージング技術にも成功したことから、冷蔵庫で2、3週間の保存ができるという、ブランド名どおりに、夢を現実のものに変えた野菜になった。一年を通じて安定供給でき、価格変動をきたすこともない。

玉川大学サイテックファーム(植物工場)では、種まきから発芽、LED光源による栽培を経て収穫まで17日間で出荷。生育段階を4 つに分け、レタスにとって最適な光 環境下で栽培している。

 

人類の食料問題を視野に、海産資源の養殖研究に取り組む

 

   7品種に増えたのは4年前から。最高級の苗を使用したプレミアムフリルレタス、プレミアムフリルルージュ(赤系)は、1袋450円程度と少し値は張るが、渡邊教授は「おかげさまで好評に市民権を得てきて、2、3袋まとめて買ってくださる人もいます。事業としての目標を達成してきました」とほほ笑む。

  「腸内フローラの大切さが強調されているように、サプリメントを飲むのもいいですが、やはり野菜を直接食べることが身体にいい。野菜の苦手なお子さんに食べやすいレタスにと改良も進めてきました。ビタミンCを多く含むレタスへの改良もできている。最近の研究で、腸内細菌が認知症の予防に関係することもわかってきています。また水耕栽培に使う溶液の成分を調整し多量のカリウムを摂取することのできない患者さんのため低カリウム野菜の栽培も帝京大学医学部と協力し研究しています。高齢者にも喜ばれ、医療にも役立つ野菜を作っていきたい」

   ガラス窓の向こうで、赤や青、緑といった鮮やかな明かりが揺らめいている。試みに、パッケージされたばかりのプレミアムフリルレタスを手に取った。両手で抱えるような大きさで、レタスとは思えない重量感がある。開けたとたん、芳しいほどの香りが広がる。1玉のレタスを前にして食欲がそそられるという体験をするとは思いもしなかった。シャキシャキとしっかりした歯ごたえ、みずみずしい旨みに驚く。夢菜は、高品質スーパーの紀ノ国屋、東京近郊の有名なホテルやレストランにも納品されているほか、この生産技術がセブン‐イレブンなどのコンビニエンスストアのサンドイッチにも導入されている。

玉川大学サイテックファーム(植物工場)外観

品質検査経て出荷の準備がされる

Odkyu OX玉川学園店に並ぶ「夢菜」

品質検査を経てOdakyu OXの全28 店舗、紀ノ国屋7店舗、無印良品 銀座などの店頭に並ぶ。また小田急 箱根ハイランド、グランドハイアット東京(六本木)他有名ホテルや、レストランなどでも使われている。

   そして、農学部先端食農学科では、LED農園で栽培する野菜をイチゴやトマトなどの果菜類や根菜に広げる研究が進められる一方で、アワビの陸上養殖研究も始まっている。近い将来、玉川大学産のアワビが私たちの食卓に届く日が訪れるかもしれない。

   夢を実現させた「夢菜」の先端技術は、今後海外市場に伸びることが予想される。そして海産資源の養殖を手掛け、人類が直面する食料問題の解決に貢献するであろう。玉川大学農学部のこれからに目が離せない。

LEDレタスに続けとばかりに、海産資源の安全で安定した生産を目指し2016 年3月「アクア・アグリステーション」が誕生。天然の海水には排水からくる汚染物質や食中毒の原因となる腸炎ビブリオ、カキのノロウイルスなど人体に危害を与えるものも少なくない。

「アクア・アグリステーション」では微生物や電気分解を使って水を浄化、循環させ、アワビやニジマスの養殖研究が進められている。アワビは約120gに育ち2018 年から有名日本料理店のおせち料理にも使われている。「玉川の丘アワビ」が食卓にお目見えする日が間違いなくやってくる。

渡邊博之教授

名古屋大学農学部農芸化学卒業、筑波大学大学院修了後、三菱化学㈱(現、三菱ケミカル)横浜総合研究所主任研究員を経て03年玉川大学農学部応用生物化学科助教授、08年より現職。玉川大学 農学部 先端食農学科 教授 博士(農学)玉川大学大学院 農学研究科長

「玉川大学にはポテンシャルの高い学生が多いです。国際的な学会で論文を発表する大学院生もたくさんいます。私は野菜もつくっていますが、人も育てていきたい」

お問い合わせ

玉川学園広報課 ☎042-739-8710
町田市玉川学園6-1-1


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