偏愛点描

萩原朔美のスマホ散歩

散歩は、街を一冊の本のように読む事。だから、ついつい長引いてしまう。おまけに、携帯で撮影もするから散歩だか家出だか分からない。同じ場所を毎日撮る定点観測。奇異に感じた光景。同型の収集。カーブミラーに映る自分等。
面白いことに、散歩のついでだった撮影が、今では撮影するための散歩になってしまった。手段の目的化だ。これから展開する画像を見た人達が、それぞれ自分の好みで街を散歩し撮影し始めてくれたら、とても嬉しい。


第3回 蔦の家 2020年8月7日

凄い、と思って撮影してしまう。ところが、写真を見ていて何故凄いと感じたのか分からなくなる。家を覆い尽くした蔦の生命力?
蔦が家を食い尽くしたホラーのような恐怖?
蔦とも家とも分からなくなるよう面白さ?
結局、主役が蔦で、家が背景に隠れている状態の不安定感が、撮影したくなる原因かと、思う。
家であり、蔦である。

第2回 何かに見える 2020年7月30日

蔦や朝顔などが家の壁に緑色の絵を描いてる。一目で分かるのもあれば、抽象絵画のように思えるのもある。何かに見えるのは、一瞬面白い。なんだか分からないのは、数日面白い。で、一番面白い事は、いつまでも変化し続けることだ。いつまでも未完。あるいは非完だから面白いのかも。


第1回 定点観測 「塀」 2020年7月28日

 散歩していて、目に止まった街路樹とか、ベンチとか電話ボックスとかを、同じアングルで何年も撮影し続ける。出来上がった写真を並べてみると、見慣れた風景が季節によって、時間経過によって激変することを発見する。これが面白い。

一番の激変は、街路樹やマンション一棟がある日こつぜんと消えてしまった事だ。シャッターを押し続けた事が原因ではない事を祈るばかりだ。

行き止まりの看板が、生垣の中に。塀だから、どう見ても、誰も看板が無くても先に行かない。
同じ看板が植物で見えない。さらに意味ない。(笑)



photo by Gombi

はぎわら さくみ

エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだらなんでも書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長を務める。

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