②毎日が最期の晩酌 

3時40分から始まる私の一日

 

5月○日。昨日の一日を振り返って認(したた)めてみる。
3時40分 出勤。すでに解錠してある通用口の扉を開けると、当直のA青年が朝刊をかかえて出迎えてくれる。いい青年だ。
神棚の塩と水を新しくして二礼二拍。次いで別の棚の上に鎮座している真鍮製の観音像に向かって声高らかに「延命(えんめい)十句(じゅうく)観音経(かんのんきょう)」を唱える。朝刊にさっと目を通したあと、すぐに仕事に取り掛かる。
7時00分 机の上に脚を伸ばして一息。
7時30分 院内の気功道場で練(れん)功(こう)。参加はおよそ20人。車椅子が一人、ベットのままの参加が一人。鍼灸師のN君が巨体を揺すって世話をやいている。これもいい青年だ。
8時00分 朝食。職員食堂で栄養科長のAさんが淹れてくれたコーヒーと昆布茶を各一杯。ずっと以前から朝食はこれだけだ。
8時15分 予定の患者さんと病室で戦略会議。二人で膝を交えて、治療後のあれこれについて語り合う。
9時00分 病棟回診、S副院長、T看護師長、H看護師、W心理療法士、N鍼灸師がいつもいっしょに回ってくれる。ありがたい。
10時30分 回診を終えて、ホメオパシーの部屋に。ホメオパシーはドイツで生まれて200年余の歴史を誇る代替療法だが、いまや、わが対がん戦略に無くてはならない存在である。
ココアを一杯のあと、回診で得た情報をもとに各患者さんの診断処方をおこなう。

一日の締めくくりの美味しい晩酌

 

 11時45分 昼食。長崎ちゃんぽんと山形の熨(のし)梅(うめ)を一枚。これは私だけのメニューである。ゆっくり食べていられないので、昼食は一皿ものときめている。特にめん類が好きなのだ。そして、午後のハードスケジュールに備えて甘いものを少し。それが熨(のし)梅(うめ)というわけだ。
 12時00分 外来のホメオパシーの診断。
 13時00分 再び病棟へ。三人の患者さんと戦略会議。
 14時30分 外来診察。
 16時30分 帯津良一「場」の養生塾。日々内なる生命力を高めつづけることによって地球の場の生命力の回復向上に貢献する人を輩出するために2000年5月に発足した。院内の気功道場で練功と講義。50人の塾生で賑う。
 18時30分 夕食。一日のクライマックス。満を持して職員食堂へ。
 まずはビール。次いでウイスキーのオンザロック。この日はバランタインの17年。肴は鰹の刺身。熱々の空豆。柔らかい谷中生姜、到来物の明石鯛の煮付と旬がいっぱいだ。それに定番の湯豆腐。醤油のよく滲(し)みた刻み葱の残りを白飯にかけて締め括り。
いつの頃からか、今日が最期の日と思って生きている。夕食はさしずめ最期の晩餐、いや晩酌だ。身を正し、覚悟をもって飲み食べる。これぞ養生の粋(すい)。

20090623225314

おびつ りょういち

帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会名誉会長。1936 年埼玉県生まれ。61 年東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科医局長、都立駒込病院外科医長などを経て、82年帯津三敬病院を開設し院長。西洋医学だけでなく、中国医学、ホメオパシー、代替医療など様々な療法を駆使してがん診療に立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学の確立を目指している。 新刊は『ドクター帯津の健康暦365+1』(海竜社)など。講演会、養生塾などの開催については、http://www.obitsusankei.or.jp/ をご覧ください。


このコラムの記事一覧

新着記事

おすすめ記事

成城学園前~住人御用達の看板店

いい街には、いい本屋がある

浜美枝さんの箱根

Present

WEB限定プレゼント

Category

from Readers

Club