季を遊ぶ

文=有吉玉青

ふたたび秋に

行きたいところにはそのためだけに出かける

 

 いつでも行ける、何かのついでに行こうと思っていると、いつまでたっても行けないということを、経る歳月が教えた。行きたいところがあるのなら、そのために出かけないことには行けるものではない。

 それで思い立ち、京都、東山の永観堂 禅林寺に出かけたのは、この春のことだった。

 そこのご本尊、後ろを振り返った姿の「みかえり阿弥陀」を雑誌で見て心惹かれ、切り抜いたのは何年前のことだろう。関西にはしょっちゅう行くのだから、そのうち拝観できるだろうと思っていて行けずにいたのが、こうして実現した。

 ほんとうにそのためだけに出かけた。せっかく来たのだからこそあそこもここもと欲は出さず、永観堂へまっしぐら。そうして境内のお堂や塔をひとつひとつ訪ね、あれこれ思いをめぐらせる。

「みかえり阿弥陀」は本堂の阿弥陀堂にまつられていた。正面から入ると、阿弥陀様はお身体はこちらを向いているが、お顔はほんとうに左肩越しに振り返っておられる。横顔しか拝顔できないのかと思ったら、近くに寄ることができ、そのやさしい
お顔にみとれた。

……続きはVol.41をご覧ください。

ありよし たまお

作家。東京生まれ。早稲田大学哲学科、東京大学美学藝術学科卒業。ニューヨーク大学大学院演劇学 科修了。1990年、母・佐和子との日々を綴った『身がわり』で坪田譲治文学賞受賞。『ニューヨーク空間』『雛を包む』『車掌さんの恋』『風の牧場』『恋す るフェルメール 37作品への旅』『カムフラージュ』 『美しき一日の終わり』『ソボちゃん いちばん好きな人のこと』など多数の著書がある。

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