親しい仲間は、お墓友だち

私の生前整理 2014年4月1日号より

文=三枝成彰

(作曲家)

実感をともなって
迫ってきた〝自分の番〟


 自分が死んだあとの具体的なことは、長い間、何も考えずにいた。だが、60代もなかばを過ぎると、「死」は、実感をともなって迫ってくる。


 年をとるにしたがって、親や親戚、先輩や友人、そしてお世話になった人たちが次々と世を去り、葬儀に出る機会も多くなる。若いころのように徹夜もできなくなったし、無理もきかなくなってきた。人一倍、体は丈夫なほうだと思うが、健康のためにたくさんの薬やサプリメントを飲むし、病院の先生たちともおつきあいしつつ、日々を過ごしている。


 いつかめぐってくるはずの〝自分の番〟を考えるようになった数年前、日ごろから親しくさせていただいている経営コンサルタントの堀 紘一さんから突然、「三枝さん、お墓を買わないか?」と言われた。 
 面食らう私に堀さんは、「麻布十番のお寺に土地がある。僕はもう買っているんだ。死んでからも友達どうしのお墓が一緒に並んでいるなんて、いいだろう?」とたたみかけてきた。堀さんの勢いに押されたせいもあったが、私もこれはよいきっかけだと思い、そのお寺に将来自分が入るお墓の土地を買うことを決めてしまった。

あの世に行っても
同じ場所で眠り続ける


 それ以来、親しい人から「お墓を探している」といわれると、このお寺をおすすめしてきた。同じ敷地内の〝お墓仲間〟には、ある有名女性作家や俳優・映画監督の奥田瑛二さんとエッセイストの安藤和津さん夫妻、前防衛大臣で安全保障スペシャリストの森本敏さんがいらっしゃるし、某有名商社の監査役や作曲家の坂本龍一さん、そして元衆議院議員の与謝野馨さんもおられる。そのほか、まだ購入されてはいないが、女優の川島なお美さんも将来のお仲間候補だ。2009年に亡くなったコピーライターの眞木準さんは、私のお墓が建つ場所と背中合わせのところに眠っておられる。飲食店の多い土地柄、どこからか焼肉の匂いが漂ってくる、墓地らしくない墓地である。

 昨年の桜の季節には、堀さんのご提案で、この〝お墓仲間〟と麻布十番の蕎麦屋で昼間から酒を飲み、食事をする機会を持った。今年も行う予定にしているし、来年以降も続けていきたいと思っている。

 皆さんとは今までも親しくしてきたのだが、やがて来るべき日が来て、この人たちと自分が一緒の墓地に入り、ずっと同じ場所で眠り続けるのだと思うと、また新たな感慨が湧いてくる。あの世に行ってから一緒に過ごす〝お墓仲間〟がたくさんいて仲よくしているなんて、聞いたことがない。こんなことをしている人たちは、とくに都会ではあまりいないのではないだろうか? われながら、なかなか素敵なことだと思っている。

 ちなみに、奥田・安藤夫妻の長女で映画監督の安藤桃子さんが、私たちみながお墓に入ったあと、「私が墓守をします」と請け負ってくれているそうだ。彼女はしっかりしたいい子だから、きっと約束を守ってくれることだろう。喜んでお世話になろうと思っている。

さえぐさ しげあき
作曲家 日本モーツァルト協会理事長 東京音楽大学客員教授 1942年生まれ。東京藝術大学卒業、同大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」、オラトリオ「ヤマトタケル」、映画「優駿」「機動戦士ガンダム~逆襲のシャア~」、NHK大河ドラマ「太平記」、「花の乱」。2004年、プッチーニの「蝶々夫人」を下敷きにしたオペラ「Jr. バタフライ」を世界初演(2005 年に神戸で再演)。この作品は2006年8月にイタリアのプッチーニ・フェスティバルでも再演され、話題を呼んだ。2007年、紫綬褒章受章。2008年、日本人初となるプッチーニ国際賞を受賞。2010年、オペラ「忠臣蔵」外伝、男声合唱と管弦楽のための「最後の手紙 The Last Message」を初演。2011年、渡辺晋賞を受賞。2013年、新作オペラ「KAMIKAZE-神風-」を世界初演した。

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