10年の歳月と思わぬ収穫

医師と患者をつなぐソーシャルワーカー

 

昔、主治医さんとどうしても気が合わないので、主治医さんを替えていただけないだろうかという患者さんからの要望を何回か受けたことが ある。医師と患者さんが互いの信頼 感の上に一体になることこそ、医療 の基本であると考えている以上、この要望には誠心誠意こたえるようにしている。

まずは、わが右腕のような総師長を呼んで「よきに計らえ」と丸投げしてはばからなかった。総師長こそ好い面の皮だ。さぞかし苦労したにちがいない。ところがここ10 年は、そのような要望を受けたことがない。わが病院の自然治癒力が高まって、そのような要望が皆無になったとも思われないので、ここはどうしても 11 年前に就職して来たソーシャルワーカーのN君のはたらきであると推量している。

彼は年来の志望であった福祉関係の学部を卒業して、私のホリスティック医学に惹かれて、わが病院に就職して来たという。たしかにソーシャルワーカーの仕事は人間まるごと、ホリスティックそのものだ。

ところで、ソーシャルワーカーとは心理的、社会的な問題をかかえている人に問題解決のための援助を提供する専門職の総称である。そして、ソーシャルワーカーとしての資格はないが、ほとんどのワーカーは「社会福祉士」とか「精神保健福祉士」などの国家資格を持ち合わせているという。

 

人の青年たちが わが病院を変えた

 

ホリスティックであろうとなかろうと、患者さんに寄り添うことが医の基本である。わが病院の医師も看護師もそのことは十分に承知している。しかし、その寄り添い方は職種によって、自ずから違いがあるというものである。

患者さんは直接の医療行為とは少し隔たったさまざまな問題に直面る。冒頭の主治医とどうしても気が合わないというのもその一つなら、諸般の事情で病院を替わりたいとか、緩和ケアを専門とする施設にしろ、訪問看護をお願いするステーションにしても、これを探すとなると、医師や看護師では手に余ること がしばしばだ。

このような領域をきめこまかい心配りで、設えてくれるのがソーシャルワーカーなのだ。N君は持ち前のやさしさに加えて、抜群の事務処理能力で、寄り添い合う隙間を埋めながら独自のネットワークを作っていった。そのために彼への期待とともに需要が大きくなり、いまでは二 人の好青年を得て、三人がかりで、それぞれが携帯電話を耳にあてながら小走りに院内を歩き回っている。

私の講演を聴いた訪問看護師さんの発言、

「先生の病院が評判がよい理由がわかりました。とりわけ良いのがソーシャルワーカーさんの評判ですね」。

おびつ りょういち

帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会名誉会長。1936年埼玉県生まれ。61年東京大学医学 部卒業。東京大学医学部第 三外科医局長、都立駒込病 院外科医長などを経て、82 年帯津三敬病院を開設し院長。西洋医学だけでなく、中国医学、ホメオパシー、代替医療など様々な療法を駆使してがん診療に立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学の確立を目指している。 新刊は『毎日ときめいていますか?』(風雲舎)など。講演会、養生塾などの開催については、 http://www.obitsusankei.or.jp/ をご覧ください。


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