生命の循環と追試験

往路150億年、復路49日の生命の循環

 

 先日、「生命の循環」という大テーマの下に講演を行った。私の生命の循環に対する解釈はこうである。まず、私の生命は私の両親からの授かりものである。そして私の両親はそれぞれの生命をそれぞれの両親から授かっている。このようにして生命の淵源を追い求めていくと、それによって宇宙が生まれたといわれる大爆発ビッグ・バンに至る。

 ビッグ・バンがいつ起こったかについては諸説があるようだが、仮に150億年前とすると私の生命は150億年長い長い旅を経てこの地球にやって来たことになる。何故に地球に? 私の生命は多くの両親の身体を擦り抜けている間に少しずつ秩序性を獲得していって現在に至ったのである。

 そのためにエネルギーを使い果たしてしまい帰路の燃料不足を招いてしまったのである。そこで宇宙の根元が地球を与えてくれたのである。ここで何十年か修行することによって帰路の燃料を用意しなさいというわけである。何を隠そう、老化と死とはそのための道程なのである。そのうえで中有(ちゅうう)の49日の旅を経て故郷に帰るのである。私たちの生命は往路が150億年、復路が49日の循環の中にあるのである。
 

輪廻転生とは追試験である

 
  終って、
「輪廻転生についてどう思いますか?」
  という質問。
「あれは追試験のようなものでしょう」
  と答えた途端、ある追試験の情景 が鮮やかに蘇ったのである。

  医学部4年の1月。卒業試験を終えて、勇躍、蔵王温泉にスキーの一人旅。十分に楽しんで下宿に帰ってみると、教務課からの一通の手紙。 貴殿は循環器内科の試験が不合格につき追試験を行うので〇月〇日、U 教授の下に出頭せよとあるではないか。

  〇月〇日は疾うに過ぎている。はたと困って、俺が落ちるくらいなら、あいつも落ちているだろうと、 親友のNのところを訪ねてみたが、 えっ!   俺は知らないよとばかりに我関せず焉の風情である。仕方が無いので教務課に行ってS課長さんを訪ねてみた。

  S課長さんは学生の面倒見がよいので有名である。私も大好きな課長さんだ。すぐにU教授に電話。 いまから追試験を行うのですぐ行って下さいという。恐る恐る教授室を訪ねると普段の授業では強面の教授 がにこにこしながら迎えてくれて、

「追試験は合格です。帰ってよろしい」

  の一言。狐につままれたような気持で目をぱちくりさせていると、

「一言だけ言っておくと、もう東大出だというだけで通用する時代ではないからね」

  これも生命の循環の一齣(ひとこま)にちがい ない。

おびつ りょういち

帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会名誉会長。1936年埼玉県生まれ。61年東京大学医学 部卒業。東京大学医学部第 三外科医局長、都立駒込病 院外科医長などを経て、82 年帯津三敬病院を開設し院長。西洋医学だけでなく、中国医学、ホメオパシー、代替医療など様々な療法を駆使してがん診療に立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学の確立を目指している。 新刊は『はつらつと老いる力』(KKベストセラーズ)など。講演会、養生塾などの開催については、 http://www.obitsusankei.or.jp/ をご覧ください。

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