music『ロンドン・コーリング(40周年記念盤)』

ロックは絶対に滅びない!

 

文=立川直樹

 

     11月18日付の朝日新聞の〈文化の扉〉で「ロックは滅びるのか」という特集記事が組まれていた。2017年にアメリカで〝ヒップホップ/R&B〟の売り上げが初めて〝ロック〟を超え、否定的な内容ではないにせよ「君はロックを聴かない」という歌がヒットする世の中になっているが、僕は絶対に「ロックは滅びない」と断言できる。

     50周年を記念して発表されたビートルズの傑作『アビー・ロード』の豪華リマスター盤にキンクスの『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』のアナログとCDのBOXセット、デヴィッド・ボウイの『スペイス・オディティ(2019ミックス)』、1969年から70年に年代が変わる時、ニューヨークのフィルモア・イーストで行われた4回のステージ、全43曲、5時間を超える伝説的な演奏を完全収録したジミ・ヘンドリックスの『バンド・オブ・ジプシーズ:コンプリート・フィルモア・イースト』がずらりと並び、ローリング・ストーンズの『レット・イット・ブリード』も50年の歳月を超えて輝きを放っている。

     ロックはもうクラシックとジャズの領域に入っており、ダリやアンディ・ウォーホルなどのアートと一緒に語り、楽しむところまで達していると僕は思っているが、8月半ばに大阪の万博記念公園でウッドストックの50周年を記念して野外スクリーンで音楽ドキュメンタリーものの超大作『ウッドストック』を上映するイベントをプロデュースした時に、それを裏付けるようなうれしい出来事が起きたのである。

     「サマー・オブ・ラヴ」と名付けたイベントにふさわしい雰囲気でみんながリラックスして映画を楽しみ、中には踊る人もいて、それをスタッフと「いい感じになったね」と話していた時に近づいてきた若いママと5歳くらいの男の子。「すみません。あの黒人の人って誰なんですか? この子が気に入っちゃって……」と思いもよらぬような質問をされたのだが、ジミ・ヘンドリックスの名前を口にすると、それをうれしそうに男の子に伝え「明日もまたきます」と言って帰っていく時に、男の子がジミヘンのアクションを真似していたのは映画のシーンのようだった。これぞロックのひとつの継承。10月の下旬に大阪で写真家のトシ矢嶋さんの写真展「LONDON RHAPSODY」の開催に合わせて、僕と森永博志がやっているFM番組「ラジオ・シャングリラ」の公開録音を会場の「NOON+CAFE」でやった時も、完全に二世代にわたる人達が大勢集まりロックのグルーヴに浸っていた。

     その時にも話に出てきたザ・クラッシュの『ロンドン・コーリング』の40周年記念盤が11月15日に発売になったが、史上最高のロック・アルバムの1枚と言われ〝ロックンロールの最も象徴的なイメージ〟と呼ばれた刺激的なカヴァー・ショットを含め、今なお輝きを失うことのない名盤は3千セット限定なのでこの機会に手に入れることをお勧めしたい。

     他にもボブ・ディランのブートレッグ・シリーズ第15集の『トラヴェリング・スルー』、結成より40年以上の長きにわたって、絶大な支持を今も受け続けているストラングラーズの27年ぶりの単独公演を記念して発売された『黒豹』などの名盤も軽々と時空を超えていたし、11月27日にはピンク・フロイドとしての〝最後のパフォーマンス〟〝2019最新リミックス〟未発表音源6時間以上、未発表映像7時間以上収録した16枚組、1987年から現在までのピンク・フロイドの全てを詰め込んだ究極のアーカイブ・ボックス『ザ・レイター・イヤーズ』も発売された。

     ブルース・スプリングスティーンがアルバム発表に合わせてツアーをしないので、その代わりにと自ら監督して作ったコンサート・ドキュメンタリー・フィルムのサウンドトラック盤『ウエスタン・スターズ―ソングズ・フロム・ザ・フィルム』も、才能も魅力もあるのは認めるもののちょっと苦手と言っている僕も素直に脱帽してしまった素晴しい出来映えのアルバムだった。12月4日に発売されたレナード・コーエンの予期せぬ新作については、次回にゆっくり書くことになるだろう。

ザ・クラッシュ『ロンドン・コーリング(40周年記念盤)』

◆限定スクラップブック仕様:6,500 円+税
 ハードカバー豪華本+1CD SICP-31301~31302
◆限定日本プレス2LP:5,800 円+税
 日本のみCLEAR VINYL決定 SIJP-1012~3
◆通常盤2CD:3,000 円+税
 紙ジャケット仕様の通常盤2 枚組CD SICP-31309

たちかわ なおき

音楽、映画、舞台、美術、出版など幅広いジャンルで活躍するプロデューサー&ディレクター。伊丹十三、篠山紀信、横尾忠則、久石譲、ピエール・バルー、ミック・ロック、和田誠、鋤田正義など各界のアーティストの映画音楽から展覧会までプロデュースを手がける。ジャンルをかけ合わせるメディア・ミックスやロックとオーケストラのコラボレーションなどでは独自の手法で高い評価を得ている。著書に『シャングリラの予言(正・続)』(森永博志氏との共著)、『セルジュ・ゲンスブールとの一週間』『父から子へ伝える名ロック100』『TOKYO1969』など多数の著書がある。


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