artマネとマティス もうひとつの楽園

マティスには南仏ニースの青い空と海がよく似合う

 

文=太田治子

 

4月、箱根でマネとマティスが箱根でコラボレーション展

 

  マティスの絵は、明るい。マティスの絵は、楽しいと思う。今から30年以上も前の夏、私は初めてニースのマティス美術館を訪れた。小高い丘の上にあるばら色の小さな美術館は、ニースの青い空と海にぴったりだと思った。そこでみたマティスの晩年の《自画像》もばら色で描かれていた。あご髭までも、ばら色なのだった。絵の中のマティスは、愉快そうに笑っていた。彼は、ニースが大好きだった。

  実は、3月末から、南フランス美術館巡りの旅をすることになっている。およそ10名の皆さまとともに、「美術館同行講師」として出発する予定なのだ。今現在、新型コロナウィルスという厄介な問題で、世界中が騒然としている。たくさんの感染者がでた日本からの観光客をフランスは受け入れてくれるだろうか。ふと不安にかられる時《自画像》のマティスのおおらかな笑顔が浮かんでくる。「いつでも、待っていますよ」 明るい声が、聞こえてくるような気 がするのだった。

  この4 月末から、箱根のポーラ美 術館で「マネとマティス もうひとつの楽園」展が開かれる。ポーラ美術館の所蔵するモネやマティスの名画と共に、パリ市立近代美術館所蔵の《トルコの椅子にもたれるオダリスク》もみることができる。とても楽しみである。

 

終生「快い椅子のような絵を描きたい」と願っていた

 

 マティスは、多くの「オダリスク」の絵を描いている。その中で、一番愛らしいオダリスクが、今回来日することになる。オダリスクとは、オ スマン帝国の君主(スルタン)に奉仕する女奴隷を意味するという。しかしこの顔は、日本のこけしにも似ているように思う。マティスは、どうしてこのような顔にしたのだろうか。他のオダリスクの絵の中の女性も、私にはどうも日本女性のように思われてならないのである。  

「私の自然な好み、つまり東方の芸術への偏愛……。」マティスはそのようなことを語っているが、絵の中の顔以外の小道具などからは、さして日本を感じることはない。しかし、その顔があまりにも日本女性なので、「マティスは、日本が好きなのだ」と思い込みそうになってしまう。
 
  じっと絵の中の顔を見つめていると、これは生身の女性ではない、弁天さまのようなポーズをしている。マティスは日本の弁天さまを描いたのかもしれないとも思われてくるのだった。顔に比して大きな足も、好ましい。マティスは、この絵を描いた1928年頃幸福だったという。 しかし第二次世界大戦が始まると、レジスタンス運動に加わったことから妻と娘が逮捕される。大病にもかかった。苦しい日々の中で、彼は自分の描いた弁天さまのようなオダリスクに救われたのかもしれない。マティスはニースで、制作を続けた。84歳でなくなるまで、「快い肘掛椅子のような絵を描きたい」と願っていた。

《トルコの椅子にもたれるオダリスク》 1928年 油彩、カンヴァス 60.0×73.0cm パリ市立近代美術館 Musée d’Art Moderne de la Ville de Paris © Musée d’Art Moderne/Roger-Viollet

〔展覧会〕マネとマティス もうひとつの楽園

 

[会期〕2020年4月23日(木)〜11月3日(火・祝)(会期中に展示替えあり)
〔開館時間〕9:30〜17:00(入館は16:30まで)
〔休館日〕会期中無休
〔観覧料〕一般1,800円、65歳以上1,600円、大学・高校生1,300円、中学生以下無料 ポーラ美術館

ポーラ美術館
〔住〕神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
〔問〕0460-84-2111
PRESENT 上記鑑賞券を5組10名様にプレセントします。 応募〆切は5月31日

おおた はるこ

神奈川県小田原市生まれ。明治学院大学文学部卒業。76~79 年NHK「日曜美術館」の初代司会アシスタントを務める。86年『心映えの記』で第一回坪田譲治文学賞を受賞。朝日カルチャーセンター(新宿・横浜)、NHK文化センター(八王子、町田、 横浜ランドマーク)よみうりカルチャー横浜でエッセイ・美術鑑賞の講座を持つ。著書に『夢さめみれば―日本近代 洋画の父・浅井忠』(朝日新聞出版)他多数。最新刊『湘南幻想美術館~湘南の名画から紡ぐストーリー』(かまくら春秋社)が話題になっている。

5月29日(金)NHK文化センター青山で批評家・随筆家の岩松英輔氏との対談による「モネ、マティス、ルノワール……絵画に宿る物語」の特別講座がある。お申し込みは、NHK文化センター青山教室まで(℡.03-3475-1151)


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