『愛と闇の物語』
映画ファンならほぼほぼ記憶に刻んでいるであろう名画『レオン』。当時13歳のナタリー・ポートマンは、プロの殺し屋を演ずるジャン・レノを向こうに回し、大人びた頭の回転の早い、精神年齢は実際よりも高い少女を見事に演じ鮮烈なデビューを飾った。その後も多くの作品で受賞し、ずば抜けた美貌と演技力で、いまやハリウッド屈指の人気を誇る女優として押しも押されもしない存在である。そのナタリーが、同じ祖国のイスラエルの作家・ジャーナリストとして知られるアモス・オズ(1939-2018)の自伝的著書『A Tale of Love and Darkness』を映画化したのである。ハーバード大学出身で、読書好きな彼女が原作に出合ってから約7年の歳月を経て、監督・脚本と劇中では母親役を演じた。

原作は、イスラエル建国前夜にあたる1945年、幼少期のアモスが両親と共に過ごしていた英国統治下のエルサレムでの実体験がもとになっているので、暗く重く複雑な政治的な背景ではある。しかし、美しく賢明な母親役のナタリー、アモスを演じる少年のかわいらしさに、誰もが知らず知らず物語の中に引き込まれることになるだろう。

ナタリーは、本作について「母親の死から生まれた空虚によって作家が誕生した瞬間を描く作品」と語っている。アモスにとって母親の存在が如何に大きく、強い影響を受けてきたかを物語る内容だ。ナタリーが、演技者としても、監督としての才能も如何なく発揮している作品といえよう。
2月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、イオンシネマ 他 全国公開

配給:イオンエンターテイメント
公式HP: https://www.aitoyamimovie.com
劇場情報: http://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=aitoyamimovie