義理や人情でメシは食えない…あぶり出される社会不安


 『やくざと家族 The Family』公開中

 特段、やくざや裏社会、任侠モノに興味をもったわけではないが、昨年11月下旬に2月11日公開の『すばらしき世界』(役所広司主演、西川美和監督)をマスコミ試写会で観ていたせいか、『やくざと家族 The Family』は居ても立ってもいられず、劇場公開直後に観てきた。『新聞記者』で2019年日本アカデミー賞作品賞をはじめ各賞を総なめにした藤井直人監督作品だが、34歳とは驚かされた。

 かつて煙草の煙が立ち込める場末の映画館で東映任侠映画や実録モノの『仁義なき戦い』を観ていたのとは全く別世界のシネコンには、本物のやくざモンはおらず若い女性が一人で来場していて時代の流れを感じさせる。

 底辺に流れている義理と人情映画を準えれば、主演の綾野剛は菅原文太か、北村有起哉は松方弘樹か、舘ひろしは梅宮辰夫か。齢のせいか往年の任侠映画がよみがえってくる。アニキのために身代わりで14年の刑務所暮らし、組の若頭の息子の仇討を変わって遂げてしまうなど、どこか東映的やくざ路線の感なきにしもあらず、のストーリー。

 だが、この作品には、単なるやくざ映画を超えた現代社会の冷たい暗部をしっかり捉えているところがある。冒頭とエンディングのシーンはやくざのレッテルを貼られ藻掻いても藻掻いても水中に沈んで行く人間だし、レッテルを貼って冷たく拒否・排除する論理は現代社会の不条理そのもので、徒に「正義」を振りかざす人間の愚かさを真正面から問うてくる。

「義理や人情じゃメシが食えない」という科白は過去にもあったし、フツー人にとってはやくざ社会の常軌を逸した滑稽さは嗤ってお終いかも知れないが、実は人間社会の冷酷さと「時の経過」の非情さを思い知らされるのだ。煙の中のスクリーンが洗練されたシネコンに変わったように、身代わりのムショ暮らしを終えた14年後には「世間」はすっかり変わっていた。「ドッグイヤー」などと経済人の比喩的用語が流行った時代に作品は重なり、決して美化しているわけではないが、「義理と人情」は遠い昔の話に置き去られ行く。

 たまたま公開時期がかさなったやくざを扱った映画が、現代社会に問うているものは深く重い。そして、フツーに現代を生きている人間にとって、生きてゆくことの悲哀や残酷さが虚実皮膜に在ることを知らされることだろう。(記:次郎長)


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