以前、喜多見で店を開いていた二宮恭介・由紀夫妻がこの町に店を出したのは2011年のこと。店名の〈K〉は恭介さんの頭文字、〈23〉は二宮である。いただいた名刺の裏には〈NINO トYuki♡〉とサインがあった。外国人も多い常連客からは、〈ニノ〉〈ニーノ〉と親しみをこめて呼ばれている恭介さん、「マスターって呼ばれても返事しないので、ニノと呼んでください」と茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。
夫妻の一年のスケジュールは祭りで決まるというほど、2人そろって神輿を担ぐのが大好きで年間20ヶ所の祭りに出かける。いきなりの先制パンチに「何だか30年くらいやっていそうなバーですね」と阿部さんも、すっかりリラックスの様子。そろそろ、酒をいただきたいとカウンターに目をやれば、ラム酒が並ぶ。常時30種類くらいがそろっているらしい。そう、ここはラムを飲ませるバーであった。

ニノさんもラムが大好きで、スタンダードで飲みやすいというおすすめの〈LEMON HART〉というイギリス産のラムをロックでいただくことにした。ストレートのラムにチェイサーはコロナビールという手もある。カウンターに座る常連客のほとんどはラムを飲む。
「飲みやすくて、深い味わいとコクがありますね。病みつきになりそうです。こちらは何というラムですか」とエチケットが気になった阿部さんが訊ねたのは、〈SAILOR JERRY〉というタトゥの王様と言われる人物の名前がつけられたラムだが、残念ながら空き瓶だった。ラムと一緒に出されたラムレーズンも手作り。

「これもラムに合うんですよ」と由紀さんが出してくれたのは、さつまいものレモン煮。「シナモンの香りといい、確かにラムに合います。クセになりますね」と阿部さんは2杯目のラムを注文。さらに夫妻が作ってくれたのが自家製パンチェッタで作るスパゲティ〈アマトリチャーナ〉。阿部さんは一皿を食べつくすという健啖家ぶり。「腹がいっぱいなはずなので、僕自身が一番驚いているんですが、それだけ美味いということなんですね」と。月一回はブルースのライブも開催され、音楽と酒で盛り上がり深夜12時の閉店時間が延長されることも珍しくない。和泉多摩川の夜はディープだった。

ニノさんと由紀さん、とにかくオーナー夫妻のトークが愉快で、さらにはラムの魅力に酔いしれるバーである。ニノさんにおまかせすると、次々に美味いラムを紹介してくれる。自家製パンチェッタは、1 週間塩漬けにした豚肉を一回水洗いして、さらに塩と香草で2 週間漬け込むという手間の産物で常時あるわけではないが、単品でもスパゲティアマトリチャーナでも、一度は味わいたい逸品だ。自家製ラムレーズンも絶品で300円。そのほか、ナポリタン、ミートソース、ブッタネスカ各890円などのスパゲティや、チリビーンズにムール貝チーズ焼など各500 円とバーフードも手がこんでいる。ラムと親しくなることで、楽しみが倍増するバーである。
〔住〕狛江市東和泉3-10-4 中川ビル202 〔問〕090-1705-7431 〔営〕17:30~深夜0:00(延長OK)〔 休〕無休
*掲載時の内容ですので、新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。