北口方面に出て少し歩くと、商店街らしき通りに出た、豆腐屋、魚屋、八百屋に肉屋、おそらくは昭和から続いていると思われる個人商店が残っている風景は、どこかホッと息をつくことができる。それぞれの店の様子をうかがいながら歩いていると、いい匂いがしてきた。パンを焼く匂いだ。「パンを焼く匂いっ
て、素通りできないですね」という迫田さんの言葉におされてドアを開けた。
田野尻崇さん、茨草(しそう)さんご夫婦が2005年にオープンした〈ラマン キ パンス〉というパン屋さん。 店名はフランス語で〝考える手〟という意味で、店内にはパンで出来た大きな掌のオブジェが飾られている。

常時 50 ~60 種類のパンが並ぶが、 絶え間なく地元客が訪れ次から次にパンが消えていく。「せっかく作ったパンが残らないようにするには、 どうしたらいいかと考えたとき、毎日食べても飽きない食事パンを主流にしようと思いました」と、パン文化の本場フランスで修業した崇さんらしい発想。その思惑通り、一番人気はフランス産小麦100%で麦の旨みを味わえるバゲットや、北海道産小麦自家製酵母の引きのある生地が評判の食パン。オーダーシートが 用意されており、予約をして買っていく客も多い。そして「お客様との 距離がない親密な関係でいられるパン屋を目指した」という言葉通り、オープンから13 年、生田のパン屋さ んとして地元の人々の食の風景に欠かせない存在となっている。生田在住の女優・水野久美さんも常連だそうだ。




茨草夫人の実家が生田ということでこの町で開業した。「生田は新宿から30分くらいですが、自然があって静かな住宅地ということで、作家や音楽家といった創作活動をなさる方も多いんですよ。都会の喧騒から離れて暮しを楽しんでいらっしゃるようです」と、生田の魅力を紹介してくれた。
人気のバゲット320円、全粒粉入りパンドミ・コンプレ(山食)1斤450円、パンドミ(角食)1斤 400円のほか、オリーブのパン(プチ)170円、 長ネギのピッツァ250円、ゴボウのピッツァ300 円、フィグ・トルネード200円、いわしのキッシュ 1/8カット300円(ホール2,400円)、牛乳を練りこんだほんのり甘いパン・オ・レ330円、栗の渋皮煮とコーヒー風味の生地のしっとりした栗のクグロフ1/2カット700円(ホール1,400円)などな ど。サンドイッチも人気で、ナンプラー炒めの鶏とセロリのパクチーサンド420円、フランス産白カ ビチーズブリーとロースハムのサンド650円、レ バーソーセージのサンド520円、自家製マヨネー ズ使用のツナタマゴのサンド350円など、日によって種類が異なる。
〔住〕川崎市多摩区生田7-11-8〔 問〕044-9343757 〔営〕10:00~19:00〔 休〕月・火曜
*掲載時の内容ですので、新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。