街のお菓子屋さんにみつけたおいしいアート
駅の南口を出て、バス通りを歩くこと15分。目の前に現れたのは童話の中にでてきそうな山小屋風のお菓子屋〈ウィーン菓子工房リリエンベルグ〉。「ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家みたいですね」という小市さんは甘いものが大好き。

ドイツ語で〝百合の丘〞という意味の生粋の新百合ヶ丘生まれのお菓子屋で、かわいらしいドアを開けると、ケーキや焼き菓子を買い求める多くの客でにぎわっている。近隣の住人だけでなく、都内や関東圏以外から訪れる客も多いらしい。広告を打つこともなくすべて口コミだけというからかなりの評判に違いない。

オーナー・シェフの横溝春雄さんはスイス、ドイツ、オーストリアで5年間お菓子修業を積み、帰国後88年にこの地に店をオープンした。ケーキのおいしさもさることながら、童話世界のような緑に包まれたこの店のたたずまいに惹かれて訪れる客も多いに違いない。「24年前は店のまわりは360度、家一軒ありませんでした。この環境にしてもお客様に喜んでいただく以前に、お菓子を作る自分たち自身が楽しく仕事ができる環境であることが大事だと考えました。この楽しい環境の中で仕事ができる喜びを感じています」



ショーケースにはウィーン菓子の定番であるザッハトルテやアップル・ストゥリューデル(アップルパイ)などのほか季節の素材を使った見た目にも美味しそうなケーキが並ぶ。ケーキのほか、焼き菓子や季節折々の果物を使った手作りコンフィチュール(ジャム)も人気だ。横溝さんは最近コンフィチュールの本を上梓した。早速ティールーム
でケーキをいただくことに。ティールームもほぼ満席。窓から見える中庭の景色がまたすばらしい。実はガーデニング専門誌でも紹介されている庭だ。
春爛漫の季節には花々で鮮やかに彩色されるが、春とはいえこの日は雪がちらつく寒さ。花の時期には今しばらくの時間が必要なようだ。それでも春遠からじと庭にはメジロや山鳩が遊びにきて、横溝さんが鳥たちのために木の枝にさしていた日向夏をついばんでいた。結局一つにしぼりきれずウィーンの伝統的なチョコレートケーキのザッハトルテとイチゴのショートケーキをいただくことにした小市さん。「芸術の街だからと、こじつけるわけではないですが、庭の景色といい、ケーキの美味しさといい、職人さんの仕事といい、やはりアートですね」と横溝さんとガーデニング話に花を咲かせながらペロリと2個をたいらげた。

ウィーン菓子工房 Lilien Berg
リリエンベルグ
四国のびわの蜂蜜を使ったリリエンベルグのロールケーキ320 円(1ロール1,280 円)、ザッハトルテ400 円、チョコレートムースとバナナの組み合わせにプチシューものってボリュームたっぷりのPショコラ550 円(器を戻すと100 円返金)、シュークリーム170 円などのケーキのほか、アーモンド風味のメレンゲの生地にコーヒークリームとラムレーズンをサンドしたダックワーズ160 円、ガレット160 円、フィナンシェ160 円など焼き菓子の種類も豊富。コンフィはキャラメルコンフィ800円・1,000 円、日向夏700 円・1,300 円、いちじく700 円・1,300 円など16 種類ほど。
〔住〕川崎市麻生区上麻生4-18-17 〔問〕044-966-7511〔営〕10:00 ~ 18:00 〔休〕火曜、第1・3月曜(ティールームは土曜・日曜・祝日・11月・12月も休み)
*掲載時の内容ですので、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。ご来店時は事前にご確認ください。