ところが、2014年の記録的な大雪で、庭園の樹木は大きなダメージを被りました。私も、ちょうど当ホテルに赴任している時で、庭園は深い真白な雪原と化し、歩道も見えない中、庭園に入ると下からバキバキという音がして、うっかり株を踏んでしまったという苦い思い出があります。この大雪をきっかけに翌年の2015年「男爵の100年ツツジ 100年先への挑戦」というプロジェクトを立ち上げました。文字通り、男爵がつくった庭園文化を100年先の未来へ繋げようというものです。そのために専門家と提携し、品種を調査し、土壌改良を重ね、貴重な品種の増殖を続けています。ツツジ約3000株、シャクナゲ約300株の一本一本に管理札をつけ、データ化しています。
その活動の成果が認められ、2022年には庭園のツツジが「日本植物園協会ナショナルコレクション第10号」に認定され、シャクナゲも翌年「日本植物園協会ナショナルコレクション第15号」に認定されました。多くの皆さんにこの庭園の素晴らしさを味わっていただくため4月下旬から5月中旬には、「つつじ・しゃくなげフェア」を開催しています。男爵が、ツツジが開花するこの時期に系列会社の経営陣や従業員たちを招いて、「園遊会」を開いていました。当時の写真や記録が残っていますが、その男爵のおもてなしの精神に通ずるものです。
ホテルマン20年の経験から思うこと
急速な情報化が進む今日、ホテルの運営も徐々に変わってきました。たとえば、電話予約からネット予約が主流となり、フロントもDX化が進み、ともすればスタッフとお客様とのふれあいがないままに、チェックインできるようなホテルが増えました。当ホテルもネット予約が半数を超えますが、滞在先での美味しい食事や気持ちのいい温泉など施設の充実以上に、スタッフとの会話やふれあいもお客様にとってひとつの旅の醍醐味になるでしょう。現場の環境がギスギスしていては、スタッフが生き生きとした接客ができなくなってしまいます。学生時代アルバイトした飲食店の店長さんが、とても気持ちよく働かせてくれたことを思い出します。今は立場が逆になりましたが、スタッフが楽しんで働く、その笑顔が見たいと思います。
箱根町にはたくさんの旅館、ホテルがありますが、同業のつながりが強い地域です。私も箱根町温泉旅館ホテル協同組合の青年部の仲間に入り、集まりにもよく参加します。構成員には旅館・ホテルのオーナー経営者の方も多く、私のような会社員とは立場の差もありますが、「箱根を盛り上げよう」という気持ちは一緒です。ともに助け合いより良い方向に進めていきたいと思います。
ホテルの支配人として、スタッフ一人ひとりと会話を続けながら、スタッフのみんなが誇りをもって働けるような環境づくりをしていきたいと思っています。(談)
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