〝たくなる〟美術館

ようこそ〝たくなる〟美術館へ

 

 

文=岩田 正崔

大涌谷を望む「光の回廊」には、16万個のクリスタルガラスが ちりばめられている。美術館オリジナルの造形作品。

何度も来たくなる非日常空間

 

  箱根ガラスの森美術館のエントランスの裏側の梁には、ラテン語で〝 CREDO QUIA ABSURDUM (荒唐無稽なるが故に我それを信ず)〟と、ローマ帝国時代のキリスト教の神学者、哲学者のテルトゥリアヌス(160~220)の言葉 が刻まれています。この哲学的な言葉 は、箱根の山の中にヨーロッパの貴族の館と特にヴェネチアをイメージした非現実的な世界まさに荒唐無稽ともいえる非日常的な空間で心の安らぎを得て、新たなインスピレーションが湧いてくるというメッセージが凝縮されているのです。

  20 数年前、私がこの地を訪ねた時は、辺りは雑木林で人々が〝集う〟場所とは 到底思えませんでした。今でこそ「美術館の街」と呼ばれますが、当時の仙石原は観光地としては森閑としていました。 それでも土地の購入が決まり、林が拓けていくと、正面に大涌谷の噴煙が見えてきました。ガラス工芸は炎の芸術ですし いわば活火山はガラスの象徴、火山の麓のこの地こそガラスの美術館が存在するにふさわしいと奮い立ちました。その一方で火山の恐ろしさにも配慮しつつ、どう対処し共生していくべきかをとても大切な問題として考えています。
 
 1996年8月の開館以来館長を務め、おかげ様で 1 千万人を優に超えるお客様をお迎えし、年間平均50万人の来場者があります。特にリピーター率が 50 %に達し、何度も来たくなる私立美術館として注目されるようになりました。それは、いろいろな企画をきめ細かく丁寧に組み立て、新しい話題を常に絶やさずに、 いつ来ても新鮮でワクワクする楽しさがあり、ロマンチックな美術館であることを、お客様に感じ取っていただけた結果だと思います。そして、ガラスの森美術館は、美術を鑑賞するだけでなく、人生はどうあるべきかを感じ取ってくれるような〝哲学〟という引力のある美術館だ からだと思っています。

……続きはVol.41をご覧ください。

いわた まさたか

箱根ガラスの森美術館館長  1939年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手百貨店入社。業務の傍ら学芸員資格を取得し、百貨店 の企画部・美術部で500以上の美術展・企画展を手掛ける。 96年株式会社うかい設立の箱根ガラス 森美術館の開館とともに館長に就任。

「ピカソ・シャガールたち のヴェネチアン グラス彫 刻展」が11月24日(日) まで開催。 「Toro(雄牛)」1954年 デザイン:P.ピカソ 制作:E.コスタンティーニ


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