わが心の昭和アイドル&スター

森口博子が憧れの人と公言したテレビドラマ「Gメン’75」の顔と言えばこの男。苦み走ったニヒルな三つ揃えのスーツがよく似合う昭和の二枚目 若林豪(俳優)

 「Gメン’75」は「キイハンター」、「アイフル大作戦」、「バーディー大作戦」に続くTBS系土曜夜9時枠の東映製作によるアクションドラマ路線の4作目に当たるが、それまでの3作と異なり、登場人物の葛藤や悲哀、社会性を強調した重厚な人間ドラマをコンセプトとしたハードボイルド刑事ドラマとして製作された。

 「Gメン」と言えば、滑走路を横一列に歩く構図と、各レギュラー出演者をそれぞれアップでとらえるタイトルバックも話題だった。バックには菊池俊輔作・編曲の今でも口ずさめる「Gメン75」のテーマが流れ、芥川隆行による「ハードボイルドGメン’75 熱い心を強い意志で包んだ人間たち」のナレーションが重なり、強烈な印象を残す。放送開始時のオープニングに並んだのは、ビッグな男でゴッドファーザー・丹波哲郎、ガッツな男・原田大二郎、ハッスルする男・岡本富士太、パッショナブルな女・藤田美保子、ハードな男・倉田保昭、コミカルな男・藤木悠、クールな男・夏木陽介の7人だった。

 その後レギュラー陣の入れ替わりもあり、その都度オープニングシーンも変更されている。若林豪がレギュラーに加わった頃は、丹波、夏木、藤木、倉田、伊吹剛、森マリヤ、あるいは丹波、夏木マリ、川津祐介、伊吹剛、千葉裕、宮内洋といったメンバーだった。そのほかにも、中島はるみ、鹿賀丈史、セーラ・ローエル、范文雀、江波杏子、谷村昌彦、藤川清彦らも加わった。若林豪の役職は登場時には立花警部補だったが、205話「新Gメン対ニセ白バイ警官」から立花警部に昇格した。なお、レギュラーになる以前に、若林はまったく別の役柄で2度ゲスト出演している。80年8月29日号の「週刊TVガイド」では若林豪と中島はるみが表紙に登場。最高視聴率32.2%を記録した人気番組だった。

 放送初期、さらにその後もエンディングテーマとして流れたしまざき由理が歌った「面影」も哀愁をおびたメロディで、オリコンシングルチャート6位を記録するヒット曲となった。作曲は菊池俊輔、作詞を手がけたのはドラマの演出に関わり、映画『新幹線大爆破』『人間の証明』『桜田門外ノ変』などの監督として知られる佐藤純彌が手がけている。中森明菜はじめ、多くの歌手にカバーされる記憶に残るドラマ主題歌だ。

 
 また、若林豪が長年レギュラーを務めたテレビドラマに92年から2023年3月19日まで全39作がフジテレビ系で放送された片平なぎさ主演の「赤い霊柩車」シリーズがある。若林の役柄は京都府警の狩矢警部で、やはり若林の代表作と言える当たり役となった。これは原作者である山村美紗のたっての希望で、局をまたいで若林は狩矢警部を演じている。

 個人的に言えば、73年から74年にTBS系で放送された「新十郎捕物帖・快刀乱麻」の結城新十郎役が好きだった。坂口安吾の『安吾捕物帖』を原作とした明治時代が舞台の時代劇推理ドラマで、名探偵・新十郎が事件を解決していく。池部良が演じる瞑探偵・勝海舟、植木等が演じる迷探偵・花廼家因果が毎回推理を外し、池部と植木が大人好みのユーモアたっぷりの演技で楽しませてくれた。沖雅也、尾藤イサオ、花紀京、河原崎長一郎、野川由美子ら共演者のアンサンブルもよく、さらにナレーションの佐藤慶も愉快だった。

 各話のタイトルも「死と死と人は来ぬか雨」「血ん血ん千鳥が三羽死羽」「さよならは別れの愛殺」「相撲に気づけば、事件も済もう」など遊び心たっぷりの駄洒落がきいていて笑わせてくれた。そして、どこか得体の知れない若林豪はカッコよかった。タイトル演出を横尾忠則、音楽を都倉俊一が担当するなど、すべてにハイセンスのサブカル的なインテリジェンスあふれる笑いがステキだった。

 映画や舞台にも数多く出演しているが、若林豪はやはりテレビのスターである。そしてそこにはいつも三つ揃えのスーツが決まった昭和の男の姿があった。そういえば、森口博子が憧れの人として若林豪の名前を挙げていたことを思い出した。

文=渋村 徹

※プロマイドの老舗・マルベル堂では、原紙をブロマイド、写真にした製品を「プロマイド」と呼称しています。ここではマルベル堂に準じてプロマイドと呼ぶことにします。


マルベル堂
大正10年(1921)、浅草・新仲見世通りにプロマイド店として開業したマルベル堂。2021年には創業100年を迎えた。ちなみにマルベル堂のプロマイド第一号は、松竹蒲田のスター女優だった栗島すみ子。昭和のプロマイド全盛期には、マルベル堂のプロマイド売上ランキングが、スターの人気度を知る一つの目安になっていた。撮影したスターは、俳優、歌手、噺家、スポーツ選手まで2,500名以上。現在保有しているプロマイドの版数は85,000版を超えるという。ファンの目線を何よりも大切にし、スターに正面から照明を当て、カメラ目線で撮られた、いわゆる〝マルベルポーズ〟がプロマイドの定番になっている。現在も変わらず新仲見世通りでプロマイドの販売が続けられている。


マルベル堂 スタジオ
家族写真や成人式の写真に遺影撮影など、マルベル堂では一般の方々の専用スタジオでのプロマイド撮影も受けている。特に人気なのが<マルベル80’S>で、70~80年代風のアイドル衣装や懐かしのファッションで、胸キュンもののアイドルポーズでの撮影が体験できるというもの。プロマイドの王道をマルベル堂が演出してくれる。
〔住〕台東区雷門1-14-6黒澤ビル3F


読者の皆様へ
あなたが心をときめかせ、夢中になった、プロマイドを買うほどに熱中した昭和の俳優や歌手を教えてください。コメントを添えていただけますと嬉しいです。もちろん、ここでご紹介するスターたちに対するコメントも大歓迎です。





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