今が盛りの江戸花菖蒲、その花姿を愛でに「堀切菖蒲園」に急ぐ

「菖翁花」の名を引き継ぐ花菖蒲が守られている

 江戸時代末期の旗本、松平左金吾定朝は自らを〝菖翁〟(しょうおう)と称し、60年にわたり品種を作り出した。「菖翁花」と命名された品種が本園には数多く残っており、菖翁花圃場として整備されているのも見どころのひとつだ。

 園内の花にはそれぞれに粋な名前と「江戸古花」「江戸系」「肥後系」「伊勢系」「長井古種」と発祥地の記載がある。「江戸古花」は、江戸時代から戦前にかけて作出され背が高く群生しているのが特徴だ。品種が豊富で丈夫な「江戸系」、室内観賞向けで繊細なイメージの「伊勢系」、ボリュームのある「肥後系」、「長井古種」は、昭和37年に山形県の長井市で栽培されているのが発見されたものだ。

 一例を挙げると、青紫色の「江戸古花 葵の上」、藤色の「江戸系 清少納言」、赤紫色の「江戸系 紅鷲」、白色の「江戸古花 鶴の毛衣」、花びらがねじれているのが特徴の「伊勢系 神路の誉」や砂を撒いたような細かい斑点模様が入った「肥後系 誰待花」……とキリがないが、200種類もの品種があることに改めて驚かされる。目が合った管理育成の方に栽培のご苦労を尋ねると、ウイルスの影響で花が咲かない菖蒲が年々増えていると言う。

 しかし、これほどたくさんの花菖蒲を見ていても飽きないのは、同じ品種が重ならず、花の色や形、高さ、さらには開花時期などもイメージしながら、園内のどの位置からでも見応えのあるように植栽されているからだ。ウイルスの被害に遭う前にその華麗な花姿を毎年訪れ愛でておきたいと、ふっと過った。

 花菖蒲のみならず、スイセン、ウメ、コブシ、ソメイヨシノ、フジ、クチナシ、ヒガンバナ、キンモクセイなど四季折々の花が見ることができる「堀切菖蒲園」。訪れたい都内の名所のひとつである。

 

2024葛飾 菖蒲まつり
京成本線 堀切菖蒲園駅下車 徒歩10分
5月27日(月)~6月16日(日)
6月7日(金)、8日(土)は午後7時~9時に園内のライトアップがある。(準備のため午後6時に一時閉園)

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