演劇にとって不可欠な観客の存在

芝居への純粋な緊張感とは別の
疲弊する緊張の中での再開

――お客様をお入れしての公演ということでは9月9日からのいつ高シリーズvol.8『心置きなく屋上で』が再開公演ということになりますか。再開の目処というのはどのように立てていましたか。

坂本 やることは昨年から決まっていたんですけど、4月頃に神奈川県知事から「8月いっぱい県内施設のイベント自粛」という要請発表があって、劇場さんと連絡を取り合いながら探っていきました。9月は開館するという劇場の方針を共有したのが6月頃で、劇場が開くならばうちもやりますね、ということで、実施に向けて本格的に動き出しました。

――お客様を入れて劇場でまた公演できるということで、劇団のみなさんにとって安堵する部分、高揚感などもありましたか。

奥山 特にないですね。まだ安心はできないぞって感じだし、今もそうです。

坂本 3月に野田秀樹さんが声明を出されてから、芸術家が上から目線でみたいなこととか、演劇なんか必要ないとか、演劇が一括りにされてSNSを中心に分断が起きましたよね。実際に公演ができるかどうかということよりも、社会の中で演劇がどう扱われているのかを、ずっと観察してきたように思います。演劇界では「緊急事態舞台芸術ネットワーク」などが作られて、商業や小劇場の区別なくつながりが強化されたし、みんなである程度足並みそろえないと乗り越えられないよね、というような認識がプロデューサーたちもあるんじゃないでしょうか。どこかだけが何か特別な対策をしたら再開できる、みたいなことではないので。そういう状況で、世代やキャリアを超えて情報交換する機会も増えたには良いことだと思います。

三浦 公演できるよろこびというよりは、やっぱり不安が強いですね。これまでとはまったく違う緊張感を強いられて、疲弊するのもしんどいですし、最大限感染対策しつつ、どうやって稽古場の空気を作っていくかがすごく大事だなと思ってます。とにかく無事に千穐楽を迎えられれば良いですね。

――ロロのこのメンバーだから書ける戯曲とは、どんな世界ですか。

三浦 旗揚げからしばらくは〝ボーイ・ミーツ・ガール〟を描き続けてきました。僕らがロロを始めたときは20代前半で、若さのエネルギーみたいなものでやれてたんですよね。でもメンバーで同じように年を重ねてきて、今はみんな30歳を越えて、もうこの役はできないでしょみたいな、それを僕は考えなきゃいけないんですよね。一緒に歳を取って変わったことを、ちゃんと作品にしながら続けていきたいです。


『窓辺』
ビデオ電話で交流する人々を描く連作短編通話劇シリーズ『窓辺』は、緊急事態宣言が発出されているなか、4月19日から、You Tube Liveで無料生配信された。第1話「ちかくに2つのたのしい窓」(出演:亀島一徳&篠崎大悟)6月24日まで全8ステージ、第2話「ホームシアター」(島田桃子&森本華)5月22日~6月25日全5ステージ、第3話「ポートレート」(板橋駿谷&望月綾乃)6月26日~28日全4ステージ。この試みは演劇の可能性を探る第一歩でもあった。
『窓辺』配信風景

新作公演インフォメーション

いつ高新作公演『心置きなく屋上で』

脚本:演出:三浦直之/出演:篠崎大悟、森本華(以上ロロ)、多賀麻美(青年団)、田中美希恵、端田新菜(ままごと/青年団)
〔日程〕9月9日(水)~13日(日)全8ステージ※12日(土)14:00は同時生配信を予定
〔会場〕KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ> 
横浜市中区山下町281 045-633-6500(代表)
〔料金〕一般:3,500円、U-25:2,500円、高校生以下:無料(枚数限定)親子ペア割引:1,000円引き(親御様の一般料金が1,000円引きになります。枚数限定)〔問〕llo88oll.yoyaku@gmail.com 090-8595-7794(制作)


2015年に始まった連作群像劇『いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校』、通称「いつ高」シリーズvol.8となる新作を上演。学内のあらゆる場所で「まなざし」をテーマに様々な物語を発表しているが、今回の舞台は屋上。俳優はシリーズを通して同じ登場人物を演じ、作品ごとに主人公が代わり、学内で起こる小さな事件の〝ここ〟と〝あそこ〟がまなざしで繋がれてゆき、シリーズ全体で大きな物語となっていく様がシリーズの醍醐味だろう。高校演劇の審査員を務めるようになった三浦さんは、上演を成功させるために数々の準備に対する高校生たちの姿勢に感銘を受け、高校演劇を通して、演劇というのはほとんど準備のことなのだと教わったと言う。その感動は、三浦さんの中で次第に高校生たちの準備の手数をほんの少しでも楽にしてあげる手伝いをしたいと膨らみ、全国高等学校演劇コンクールの上演時間と同じ60分の戯曲を書き、高校生たちに無料公開するということにいたる。それが「いつ高」シリーズである。今回の新作ではどんな〝まなざし〟が交差するのか、楽しみである。

イラスト:西村ツチカ/デザイン:佐々木俊

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