帯津良一・86歳のときめき健康法 ─色気は何処からやって来るのか─

人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。

連載 第6回  文=帯津良一

 私がセックスの対象として初めて意識したのは中学時代に観た『山の彼方に』の角梨枝子さんであることはこれまでにも再三述べて来たとおりである。

 現在でもその魅力は一向に褪せてはいない。一人で飲んでいるときなど、時々思い出しでは悦に入っている。ところが、ある時、彼女の写真を一枚も持ち合わせていないことに気がついたのである。急に欲しくなった。ところが、何処でどのようにして手に入れることができるのか皆目見当がつかないのである。

 ひょっとしてと思って、編集の仕事をしている友人に相談してみた。さすがに餅は餅屋である。彼女の顔写真を大きく変えて3枚ほど届けてくれた。じつにコケティッシュ(coquettish)である。大きな額に入れて一つは池袋のクリニックの廊下の壁に掛け、もう一つは川越の病院の自室の机の上に置いた。ただこれだけで私の日常生活の場のエネルギーは、かなり高まったのである。

 欲が出て彼女の動きが見たくなった。お願いすると、また『とんかつ大将』なるDVDがすぐに届いた。松竹大船製作所の作品で、公開は1952年2月。ということは私はまだ高校一年生。太平洋戦争が終わって、これまでの借りを返すかの如く、怒涛の如く押し寄せる洋画群に翻弄されていた時代である。とても日本映画までは気持ちが届かない。この映画も初めてである。

 原作は、あの「姿三四郎」の富田常雄。男を描かせたら人後に落ちない。監督は川島雄三。主役はなんと佐野周二である。これにはいささかおどろいた。私の記憶の中にある佐野周二は、鶴田浩二、佐田啓二、高橋貞二の青春三羽烏の陰にかくれたわき役だったからである。世代からいえば池部良、三船敏郎に近い存在であるが、この二人のようなスター性もない。

 ところがさにあらず。ここでは主役の孤高の外科医を見事に演じている。すっかり見直してしまったものである。外科医は外科医でも長屋住まい。近くに住む人々の間では「とんかつ大将」と呼ばれて親しまれている。全篇にあふれる下町情緒を彼の人柄が弥(いや)が上にも盛り上げているところがいい。

 そして、彼をめぐる3人の女性。近くの病院の跡取りで外科を専門とする女医さんを津島恵子さんが、浅草裏の飲み屋の「一直」の女主人に菊江を角梨枝子さんが、昔の恋人で今は佐野周二さんの友人の奥さんに納まっている女性を幾野道子さんが演じている。

 それそれがそれなりに魅力的であるが、お色気となるとなんといっても角梨枝子さんだ。飲み屋の女将だから、いつも和服だが、一挙手一投足というか立っているだけで色気がある。酔って佐野周二さんに抱きつところなど最高だ。一体、色気というのは何処からやって来るのだろう。今度は「山の彼方に」のDVDはが欲しくなった。

『夏子の冒険』で主演の角梨枝子さん(右)。原作は三島由紀夫、監督は中村登、1953年の作品から。左は桂木洋子さん。

 

おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。

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