21.09.29 update

第3回 41歳の色気は只者ではない

人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。


帯津良一・85歳のときめき健康法
文=帯津良一

(続 いちばん好きな女優さんは?)

 イギリス映画『第三の男』(監督:キャロル・リード、原作・脚本:グレアム・グリーン、音楽:アントン・カラス、主演:ジョゼフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・ヴァッリ)が日本で封切られたのが1952年、映画少年の真っ盛りの頃である。

 いい映画である。何回か繰り返し観たはずだ。しかし、オーストリアの民俗楽器チターを用いてテーマソングを作曲したアントン・カラスにはかなわない。500回も観たという。だからこの曲の評判も高く、街中どこに行ってもこの曲が流れていたものである。

 また中央墓地の冬枯れの並木路、道端に止めた荷車に寄りかかるようにして待つジョゼフ・コットンの前を、前方をみつめたままのアリダ・ヴァッリが通りすぎていくラストシーンも、原作ではハッピーエンドだったのをキャロル・リードがグレアム・グリーンの許可を得て変えたといわれている。

 ところが、くり返し観ているうちにアリダ・ヴァッリの色気に魅入られてしまい、気がついたときにはオードリー・ヘプバーンもグレース・ケリーも追い越してしまったのである。しばらくトップの座を守っていたが、これがまた追い越されるのである。

 

 中西医結合によるがん治療を旗印にした病院をオープンしたのが1982年11月。それから5年ほどしてホリスティック医学にスライドしていくのであるが、余程珍らしかったとみえて、しばしば取材を受けたものである。

 あるとき、『ぼくが医者をやめた理由』(平凡社 1993年)を書いて突然医者をやめて作家になった永井明さんが取材にやってきたのだ。一日、朝から晩まで私の傍にいて出来上がった原稿(ゲラ)の題名が、なんと「孤独なる荒野のガンマン」と。

 いやぁうれしかった。とっさにクリスト・イーストウッドを思い出したので、マカロニ・ウエスタンを当たってみたが、この題名がないのである。あるのは『荒野の用心棒』と『夕陽のガンマン』。

 永井さんも相当な映画通なので、二つをまとめて一つにしたのかと思ったが、アメリカ映画を当たったところ、やはりあったのである。1961年度の作品。監督は最後の西部劇監督と呼ばれているサム・ペキンパー。主演はモーリン・オハラとブライアン・キース。

 観た記憶がなかったので、さっそくDVDで買い求めてみた。ストーリーはともかく、モーリン・オハラの色気に圧倒されたのである。『リオ・グランデの砦』(50年)『静かなる男』(52年)のモーリン・オハラも好きだったが、今度ほどの色気を感じなかった。今度のはモーリン41歳のときの作品。41歳の色気で彼女が私のいちばん好きな女優さんに躍り出たのである。

 病院の自室に、モーリンの写真が掛けてある。永井明さんとのご縁に感謝したい。

 

おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。

映画は死なず

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