Categories: 街へ出よう

寄席もいい、特設演芸場でもいい。伝承されてきた〝芸〟で幸せな気分を味ってみよう


  遠州森町良い茶の出どこ 娘やりたやお茶摘みに
  秋葉神社の参道に 産声上げし快男児
  昭和の御代まで名を残す 遠州森のォォ石松ゥゥ~

 清水次郎長から讃岐の金毘羅に代参を頼まれた石松は二つ返事で引き受けたが、親分に「道中禁酒」と言われ「それは無理だ」と断り、互いに引くに引けなくなった間に割って入った大政は……。
 次郎長の貫録、石松の意地の張り合いに互いに相手を思う男気がぐっと胸をつかむ名調子。無事に代参を終えた石松は京見物を終え、三十石船で大阪への帰途につく。その船上で有名な「寿司喰いねえ、酒飲みねえ」の場面になるが、その直前で「ちょうど時間となりました~」と幕。

 次いだ桂吉坊「三十石夢乃通路」は、その京・大阪を結ぶ三十石船の船上の噺。つまり奈々福姐さんは良いところを、大阪から参じた吉坊師匠にたっぷり演じてくれと託したのだ。
 上方落語は座る膝前に箱台を置いて演じる。代表的演目といわれる「三十石夢乃通路」は、往時の船道中の船着き場風景や客同士の世間話などを時にのんびり、時に声色朗々と点綴してゆく、ハメモノという噺の途中に入るお囃子がまた気分を転換させ、およそ一時間の長尺を全く飽きさせない。それは江戸の切り口上とはちがう、柔らかくも人間の本音に満ちた上方言葉の魅力だ。私は上方落語の魅力を知った。

 終えた楽屋の奈々福姐さんに、〝お好き〟という日本酒を差し入れすると名入り手拭いを頂き感激。このシリーズ第六夜は五月「この世ならぬ、男と女の道行き」怪談噺という。これもぜひ来よう。

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