こんな「いい女」はどこにもいない─辰巳琢郎さんが語る「山本陽子像」から新たな魅力が見えてくる

もう少し年齢を重ねるとさらに
自分に合った役柄に巡り合えるのではないかと思っているんです。
今の年齢はどちらかといえば中途半端で
その時を待っている状態です。

美しく近寄りがたくも男前のいい女


 改めて言うまでもありませんが、陽子さんの麻雀は気持がいい。とにかくツモが素晴らしいんです。対戦すると「コンチクショー」と思うほど手強い反面、後ろで見ていると惚れ惚れしてしまいます。でも、いくらついている時でも、出鱈目なことをするとせっかくのつきが離れていくもの。陽子さんには全くと言っていいほどそれがないんです。迷いもない。淡々と打たれます。A型の麻雀とでも言うのでしょうか。仕事に対する姿勢も、同じなのではないかと拝察します。だからこそ〝生き馬の目を抜く〞と表現される芸能界で、五十年も第一線で活躍されているのでしょう。
 その中で、僕のお気に入りを一本あげるとすれば、NHK銀河テレビ小説『となりの芝生』です。受験勉強にはいる直前、高校二年生の冬でした。この時の陽子さんは、本当に素晴らしかった。メロドラマのヒロイン的なイメージの強かった美人女優の山本陽子さんが、嫁姑ドラマの走りのような作品で、普通の主婦を演じられたのです。橋田壽賀子先生の、テレビ史に残る名ドラマだったと思います。
 先日は、渡辺淳一先生と『辰巳琢郎の葡萄酒浪漫』に出演してくださいました。この上なく楽しい一時でした。改めて感じたんですが、渡辺先生の作品のヒロインに、陽子さんは正にぴったりなんですね。昔懐かしい正統派のいい女。淑やかさもあれば、小股の切れ上がった粋も備えたいい女。美しくて近寄りがたいのに、実は男前のいい女。大先輩に対して「いい女」なんて失礼かもしれませんが、どこを探してもこんなに「いい女」はいないんですからお許しください。
 今年、芸能生活五十周年。更に年齢を重ねて、もっと自分にあった役に巡り合えることを期待している、と仰る陽子さん。そろそろ、四半世紀ぶりの共演をお願いしても宜しいでしょうか。

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