トレート・プレイ『MOTHERS AND SONS~母と息子~』に出演した原田美枝子さん


PHOTO MESSAGE 2019年7月1日号 より

「心を動かされる
すばらしい戯曲に
めぐりあいました」

原田美枝子(女優)
2019年6月4日 三軒茶屋 Bar Mにて
撮影=福山楡青

舞台『MOTHERS AND SONS~母と息子~』への思いを語る。

昨年は新国立劇場の舞台『誤解』に出演させていただきましたが、今年もまた第68回トニー賞戯曲賞ノミネート作品であるテレンス・マクナリー原作のストレート・プレイ『MOTHERS AND SONS~母と息子~』(7/26~8/4 サンシャイン劇場)で舞台に立ちます。

この作品は、本作の演出を務められる三ツ矢雄二さんが、性的マイノリティであるLGBTとは何なのかをより理解してもらうためにと立ち上げプロデュースなさる、優れたLGBTの戯曲を紹介するユニットLGBT THEATERの第一弾です。私は、一人息子をエイズで失い、夫にも死なれ、一人ぼっちになったキャサリンという役を演じます。

「息子はなぜエイズで亡くなったの? なぜ自分は孤独で、あなたたちは幸せなの?」と、息子の元恋人で、同性婚の相手と暮すゲイの男性を問い詰めていきます。

まず、脚本が面白かったですね。読み進める中でどんな展開になるのだろうと、グイグイ物語に引き込まれていきました。私の年齢になると、面白いなと思える役に出会うチャンスというのが、段々少なくなってきます。優しいお母さん、認知症の妻、人生を卒業していくお婆さんというような役柄が多くなってきました。もちろんその役を楽しみなが ら一生懸命に演じています。

でも女の人ってそういうことだけではなくて、人生を生きてきた面白さとか、深さとか苦しさだとか、いろいろとあると思うんですが、そんな役に会えそうで、実はあまり出会えていないんです。それをこの作品に見つけられたと感じました。

それに、こんな戯曲は日本では書けない、書く作家がいないのではとも思えたんです。ゲイが物語の中では笑わせる道化的な役回りで描かれることが多く、特に日本ではシリアスな部分が描かれることはほとんどない。この物語はゲイの現実、真実に正面から向き合い、異性でも、同性でも人同士が知り合って、愛して、別れてということに何の違いもない、というところにたどり着けるのではないかと感じ心が動きました。

昨年の『誤解』も、やはり戯曲の奥行きに惹かれてお引き受けしました。いろんな深さが面白く、それを手探りしながら一歩ずつ進んでいく、この暗闇に一体何があるんだろうという感じって好きです。

舞台に関しては、経験値も少なく躊躇することもありますが、面白い脚本と出合うと、つい惹かれてしまうんですね。

演劇で言えば第4幕というような人生の季節を迎えているなかで、だからこそ心が動く楽しいこと、やりたいことは全部やってみようという気持が、今回もこの舞台に向かわせているののだと思います。

いつも同じようなことをやるのはつまらないという性分で、どこか新しさが感じられる知らないところに飛び込んでいくという傾向があるみたいです。失敗してもいいから新しいことをやってみたいと思うタイプなんですね。

舞台はセリフは膨大だし、苦しいことも多いですが、生身の人間がそこにいるのを目撃するのは、観客にとっても舞台だからこその貴重な時間ではないでしょう。芝居の空気を共有する楽しさがありますね。こうしてまた舞台に立つのも、そんな魅力にとらわれた俳優の性(さが)なんでしょうか。

とにかくすばらしい戯曲であることは自信をもってお伝えできます。あとは俳優としていかに存在していくのかを大事に考えて稽古を進めていきたいと思います。とても大人のいい芝居になる予感がしています。お見逃しなく。

2019年7月1日 Vol.40より
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