日清製粉グループには、小麦粉を主とした食品販売の〈株式会社日清製粉ウェルナ〉があり、「マ・マーTHE PASTA」や「超もち生パスタ」など冷凍パスタを販売しているが、その製造は、〈マ・マーマカロニ株式会社〉神戸工場が担当。このほど両社がタッグを組んで製造過程のエネルギー使用に伴うCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルが実現した。この取組みは、生産切り替え時や清掃時に発生する少量の麺やソースの残り、検査等に使用した製品なども含まれているが、そうした食品廃棄物を活用したバイオマス発電と環境負荷の低い蒸気の活用に秘密がある。電力と蒸気の使用によってCO2排出量を年間5,200トン削減となる。

詳しく説明すると、まず電気エネルギーは、食品廃棄物の回収→バイオマス発酵・発電→工場のCO2排出が実質ゼロというスキーム。ただし問題は食品廃棄物由来の電気だけでは工場の稼働に使われるエネルギーは賄えない。そこで〈非化石証書〉を活用してCO2排出量をオフセット(実質再エネ調達)することにより、まさに資源循環のカーボンニュートラル化に至った。
一方の蒸気は、神戸工場でソースを調理したり麺をゆでたりする際の熱源として使用しているが、その蒸気の供給元の取引先は、長年かけて構築した建築廃材などを活用した〝木質バイオマス〟の安定した調達ルートで、神戸工場向けの蒸気を生産する燃料には木質バイオマスが約70%用いられている。こうした環境が整っていたことで、工場全体のカーボンニュートラルへの道が開けた。それらのプロジェクトは関西圏で完結できるという利点を最大限生かした地域密着型の取組みだった。
実現した神戸工場全体のカーボンニュートラルの成果が加わることで、日清製粉ウェルナ傘下の自社拠点でのCO2排出量は13年度比50%減、同社のCO2排出量の2030年目標を、6年前倒しで達成する形となった。
ただ非化石証書などを買うのではなく、食品廃棄物を利用して電気を作る資源循環の仕組みを採り入れたこと、それも同社の冷凍パスタの最大の工場で実現できた点に、食品会社として大きな意義があるといえる。また、従業員の作業負荷の低減にもつながったという。バイオマス発電の取引先は物理的に近距離にあることは重要なポイントで、食品廃棄物回収の時間帯や回数、回収方法のいずれも効率化を実現。当然だが、カーボンニュートラルは単年だけの課題ではなく、持続しなければ意味がない。だからこそ環境価値を高めるだけでなく、工場従業員の負荷低減も同時に実現させることで、きわめてサステナブル(持続可能)な取組みといえよう。
日清製粉グループの2030年度目標や2050年目標を達成するには、この先も様々な取組みを新規に立ち上げ、それを持続させる必要がある。それにあたって、神戸工場の取組みでもカギとなった食品廃棄物の再利用を、さらに推し進めたいとしている。

「どうしても出てしまう食品廃棄物を資源として有効利用することは、食品会社としての使命ともいえます。今後もライフワークとしてそこに向き合いたいと思っており、将来的にはグループのほかの工場でもサーキュラーエコノミー(循環経済)を促進し、カーボンニュートラル化が実現できるような横展開を目指していきたいです」
と語るのは、日清製粉ウェルナの生産本部生産戦略部の栁田浩志さん。
バイオマス発電、地域密着型で完結する循環経済、消費者の行動変容、様々な方面から環境課題に立ち向かう日清製粉グループにとって、「CO2排出実質ゼロ」を目指す日清製粉ウェルナとマ・マーマカロニ神戸工場のカーボンニュートラル化は、確かな試金石となるだろう。
◆日清製粉ウェルナ企業サイト:https://www.nisshin-seifun-welna.com/index/