一般社団法人日本作家クラブ(竹内博理事長)は5月15日、野村胡堂(別の筆名を「あらえびす」)を顕彰する目的で作られた「あらえびす文化賞」の第9回受賞者に歌手の由紀さおりを選出したと発表した。
「あらえびす文化賞」とは、大正・昭和を代表する国民的大作家である、野村胡堂を顕彰する目的で設立された。野村胡堂は、その生涯の中で、特に江戸の下町を舞台に〝目明かし〟が活躍する国民文学、捕物小説の一大傑作である『銭形平次捕物控』を著し、戦前・戦後を通じて庶民、大衆を勇気づけながら、小説を身近にした大作家である。その胡堂のもう一つの顔がペンネーム「あらえびす」として一世を風靡した格調高い音楽評論家だった。本賞は、こうした胡堂の多様にわたる業績をカバーするために文化全般を対象にしている。
今回の受賞者・由紀さおりは、歌手として童謡から歌謡曲まで人々の琴線に触れるような名曲を多数リリースし、大人から子どもにまで親しまれているに留まらず、国境を越えて世界中の人々の心をも和ませ、癒し続けている。
選考委員長の日本作家クラブ理事長・竹内博氏は、
「由紀さおり氏は、幼少時より童謡歌手として活躍され、後に歌謡曲歌手としてNHK〈紅白歌合戦〉の常連に名を連ね、テレビドラマなどを含む幅広い分野で活躍をつづけられ、これら国内のみならず、国際的にも日本の音楽文化の普及と質の向上に貢献してきた業績に対し〈あらえびす文化賞〉に値するものと思います」とコメントしている。
参考までに「あらえびす文化賞」歴代受賞者
・第1回 2016年(平28)4月24日 吉村卓三(『鳥と卵と巣の大図鑑』等の教養書・啓蒙書の出版による文化活動)、特別賞・舟木一夫(テレビドラマ「銭形平次」テーマ曲を熱唱)
・第2回 2017年(平29)10月6日 笠原章(劇団若獅子30周年および新国劇創設100周年を顕彰)
・第3回 2018年(平31)4月18日 江戸総鎮守 神田明神宮司・大鳥居信史(永年にわたり神田明神の宮司を務め、神田祭や銭形平次の碑建立に貢献した功績)
・第4回 2020年(令2)10月15日 一般財団法人 100万人のクラシックライブ(代表・蓑田秀策。クラシック音楽のコンサートを通じて社会に幅広く普及、伝達)
・第5回 2021年(令3)11月18日 クラリネット奏者・花岡詠二(スウィングジャズの先駆者としてジャズの発展に貢献した)
・第6回 2022年(令4)6月8日 俳優・高橋英樹(映画やテレビドラマでの名演技が国民に夢や希望、勇気を与えた功績)
・第7回 2023年(令5)6月15日 弦 哲也(作曲家の第一人者として楽曲提供数は2500以上にのぼり、歌を通じて国民大衆の心を捉え、癒し、明日を生きる活力に資した功績) 特別賞・影山 亮(明朗時代小説家・山手樹一郎の学術研究)
・第8回 2024年(令6)6月10日 女優・水谷八重子(俳優、ジャズ歌手、エッセイストとして日本の芸術・大衆文化の発展に大きく貢献した)
[編註]日本作家クラブは、創作活動に携わる者たちの職能的な結合体として、広く文化や芸術の振興および会員相互の自己啓発と親睦を図ることを目的に1949年に設立された団体。初代会長は野村胡堂。草創期の会員には江戸川乱歩、海音寺潮五郎、横溝正史、山手樹一郎、山岡荘八、吉川英治らの錚々たる文豪が名を連ねた。当クラブでは作家の意味を、広い意味での表現者および表現を志す人と捉え、こうした会員による表現の場として1994年に同人雑誌『文芸』を創刊(年1回刊行、通巻27号)。2012年からは顕彰事業に着手して「野村胡堂文学賞」、2015年に「あらえびす文化賞」を創設。2019年に創立70周年記念事業を展開した。なお、「あらえびす文化賞」授賞式は、2025年6月12日 16:00より、東京都千代田区の神田明神にて。
一般社団法人 日本作家クラブ https://sakkaclub.or.jp/