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『川井徳寛―猫礼賛祭壇画―』骨董通りの現代アートギャラリー「GYOKUEI」にて開催中

 猫を描く画家・川井徳寛の個展が、 青山の骨董通り沿いの現代アートを扱うギャラリー「GYOKUEI」にて開催中である。会期は、11月29日(土)まで。

 川井徳寛は、幼少期から猫と深い関係を築いてきた。実家では彼の誕生前から猫が飼われており、物心つく前から猫は家族であり友人のような存在だった。中学時代に初めての別れを経験し、心に深い喪失感を刻む。その後、保護猫との再会を経て、18年間にわたり寝食を共にし、猫は彼の人生の安定と癒しの象徴となった。こうした体験は、代表作「飼い猫の幻視」などに結実している。

 川井は、〝猫〟という存在を可愛らしい動物だけではなく、「神聖なる奇跡」として描く。初期ルネサンス絵画のモチーフに重ね合わせることで、「守護神」「媒介者」「人間社会の鏡」へと昇華させ、さらに、人間の内面や平和のあり方を問いかける。

 作品には、猫や馬、さまざまな動植物が登場する。それらは、川井が幼少期に培った科学的好奇心と神話への憧憬を起点にし、20年以上にわたり多様なテーマと表現技法を探求して来た。近年は、独自開発したテンペラ技法を用いて、油彩・水性素材を組みあわせることで、緻密な線描と深い質感を両立させた作品を制作している。

「睡眠礼賛」83.0×54.0cm 油性テンペラ、金箔/木材

睡眠は、心と体のメインテナンスという非常に大切な役割を担っているにも拘らず、その行為自体はどこか自堕落でユーモラスな印象を与えてしまう。猫は1日約16時間程睡眠をとると言われており、「ねこ」の語源は寝る子という説もあるほど、睡眠を象徴する動物である。
眠る猫を複数描き、それぞれに光輪を付け神聖な印象を与えることで、睡眠という生物にとって大切な行為を、ユーモラスな印象は残したまま、崇高で讃えるべきものとして表現した。光輪に刻まれている花は、花言葉「眠り」の意味を持つ白いポピー。猫と人間は、お互いの体温で暖をとるため、また精神的に癒されるなどの理由で、しばしば一緒に睡眠をとる。猫と人間のお互いに利益のある関係性、相利共生も表現しつつ、ベッドを占拠されている様子からお互いの関係性のバランスも表している。


「Soul Connection」 47.8×108.4cm(額込サイズ)油性テンペラ、金箔/木材


川井徳寛(かわい とくひろ)

1971東京生まれ
1995東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
1997東京芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻修了
2008アートフェア東京2008(~2023年)
NETWORK PROJECT JAPAN / INTERALIA Gallery(ソウル、韓国)
2009 「異体共生~Parabiosis~」/ SOKA ART CENTER(台湾)
2012個展「川井徳寛的ヒーロー」/ GYOKUEI
2014Affordable Art Fair Hong Kong 2014 / a gallery(香港)
2015「ペコちゃん展」/ 平塚市美術館
Art Central Hong Kong (香港、~2019年)
2020THE HOUSE OF THE RISING LIGHT / Dorothy Circus Gallery(ローマ)
2021「美男におわす」/ 埼玉県立美術館、島根県立石見美術館
2023個展「−形而上表現としての天使−」/ GYOKUEI
2025「Rose イメージの系譜」/ ふくやま美術館


川井徳寛―猫礼賛祭壇画―
Tokuhiro Kawai “Altarpiece of Cat Adoration”
11月5日(水)~11月29日(土)展示(10時30分−18時30分)
GYOKUEI(東京都港区南青山6-8-2 1階)*日祝休廊


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