新橋演舞場、大阪松竹座、南座などでの喜劇公演で年間複数の舞台の主役を務める現代を代表する喜劇役者・藤山直美と、国際映画祭で最優秀女優賞を受賞するなど国際的にも高い評価を受け、昨年の歌舞伎座・十二月大歌舞伎『芝浜革財布』をはじめ舞台でも意欲的な活躍を見せる寺島しのぶという華も実もある当世きっての人気俳優が、舞台『お光とお紺~伊勢音頭 恋の絵双紙~』で12年ぶりとなる共演を果たす。
本作は、脚本家で演出家の小幡欣治が舞台化した1987年東京宝塚劇場で初演された『油屋おこん』が原作となっており、藤山が演じるお紺を森光子が、寺島が演じるお光を草笛光子が演じていたほか、竹脇無我、新珠三千代、山岡久乃らが出演していた。88年には宮本信子と星由里子の顔合わせで再演されている。
娘たちが年貢のため遊女に売られていく紀州熊野の寒村に生まれたとびきりの美人ウメ(寺島)が伊勢の歓楽街古市に売られると知ると、ウメとは姉妹のように育った幼なじみの庄屋の娘トシ(藤山)も「ウメが行くなら私も行くで」と、やがて妓楼・油屋の遊女お光とお紺となる。
題材となっているのは歌舞伎の『伊勢音頭恋寝刃(いせおんど こいのねたば)』で、悲劇的な内容で終わる芝居となっているが、本作は、幼なじみの途切れることのない女同士の愛と友情を描き、喜劇的要素を入れハッピーエンドになっている。
藤山と寺島の共演は97年上演の舞台『浅草慕情~なつかしのパラダイス~』にはじまり、2000年『ご存じ 浅草パラダイス』、02年『喜劇 地獄めぐり~生きてるだけで丸もうけ~』と新橋演舞場での共演を重ね、14年のドラマ「最強のオンナ」でテレビで初タッグを組み話題になった。
藤山と寺島は誕生日が12月29日と一緒で、当日は毎年コミュニケーションを取り合っているというだけあって、稽古初日を翌日に控えた会見でも、強い絆をかんじさせる縁の深さをみせていた。
寺島は「とにかく直美さんと一緒にお芝居ができるのであれば何でもやります、という気持ちで、ただただ嬉しいの一言です。直美さんの、人を笑わせた後の孤独が好きなんです。人を笑わせることに長けた人ですが、笑わせた後に〝スーッ〟と冷たい空気を出せるところがすごくて大好きなんです」と、俳優・藤山直美にベタぼれ。
藤山も、「女同士の幼なじみの良さ、みんながみんなを思いやる心。村のためにという気持ちを背負って自分の人生を生きていくというような気持ち。そしてずっと縁の切れない女同士の友情の物語が、芝居としてすばらしくまとまった作品で、しのぶちゃんの個性が生きている。しのぶちゃんの中には本当に善の分子しかない、と思わせるすばらしい人」と寺島との縁を大切に感じている発言。
さらに寺島は「以前の『浅草パラダイス』のときにも感じていましたが、直美さんは台本があっても台本がないような感じで、共演していた中村勘三郎さん(十八代)や柄本明さんもそうですが、人間で魅せるというようなすごい芝居をなさる。すごい人たちが集まると、余計なものが削ぎ落されていくのだということを直美さんの舞台で実感しました。何か新しい台本以外のことが楽しくなっていくような芝居を、直美さんとだったらできるのではないかと感じていて、作品も膨らんでいくと確信しています。ぜひ、直美さんの喜劇を楽しんでいただきたい」と喜劇俳優としての藤山のすごさをアピール。
藤山も「役者にとって一番大事なのは何かと最近思うとき、やはり華がなければいけないと。しのぶちゃんには華があってしかも決してぶれない。歌舞伎役者ではありませんが、音羽屋の匂いがします。芸の質に品があり、存在が楽しめる、あきさせない役者さんです。本筋で何でもできる人なんです」と寺島の芸の品格にまで言及する。
二人がこの人とだったら、と互いの芸を愛しリスペクトし認め合っているように、この二人が共演するのであれば、と理屈抜きで熱心な演劇ファンならずとも、劇場に足を運ぶ人も多いに違いない。令和初となる今作の上演、今、観ておきたい最高の組み合わせの芝居と言えるだろう。
早春喜劇特別公演
『お光とお紺~伊勢音頭恋の絵双紙~』
作:小幡欣治
脚色・演出:浅香哲哉
出演:藤山直美
葛山信吾 大津嶺子 澤村宗之助 瀬川菊之丞 いま寛大 田山涼成
寺島しのぶ
〔日程〕2月5日(木)~2月24日(火)
〔会場〕新橋演舞場
〔問〕チケットホン松竹0570-000—489もしくは03-6745-0888(10:00~17:00)