森美術館発、アーティスト・コレクティブ 「Chim↑Pom(チンポム)」の世界

『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』が開幕した。

「Chim↑Pom」って何? と思われる方もいらっしゃるだろう。Chim↑Pomは、2005年東京で6人のメンバーによって結成されたアーティスト・コレクティブ。彼らは世界各地の展覧会に参加するだけでなく、自らもさまざまなプロジェクトを企画しているが、そのプロジェクトは非常に斬新で、現代社会の諸問題に対しメッセ―ジ性の強い作品を発表している。

Chim↑Pomのメンバー 撮影:名和真紀子 画像提供:森美術館

 例えば、2011年の東日本大震災では、いち早く支援のために被災地を訪れ、自らの目で災害の状況を確かめ、震災と津波、事故に関する様々な作品を生み出した。東京電力福島第一原子力発電所の事故で、無人化した周囲の環境を映し出し、被災者の若者たちと希望の言葉を叫んだという。

 東京・渋谷駅のコンコースにある岡本太郎の壁画《明日の神話》の右下の壁の余白に、福島第一原子力発電所の事故を描いた絵をゲリラ的に設置した。10年後の現在も帰還困難区域内でプロジェクトを継続している。

Chim↑Pom 《LEVEL 7 feat.『明日の神話』》2011年 アクリル絵具、紙、塩化ビニール板、ビデオ、ほか 絵画:84×200 cm、ビデオ:6分35秒所蔵:岡本太郎記念館(東京)Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)

 また、2008年には、広島の原爆ドーム上空に飛行機雲で「ピカッ」と言う文字を描いた作品《ヒロシマの空をピカッとさせる》(2009年)は、「平和」に対する無関心が蔓延していることに対する一つのメッセージだったが、誤解や憶測が生まれ、論争になったことも。しかし、彼らは、プロジェクトを継続し、折り鶴を使った《パピリオン》(2013年~)、原爆の残り火をともし続ける《ウィー・ドント・ノウ・ゴッド》(2018年)など、広島を主題にした作品を制作している。

Chim↑Pom 《ヒロシマの空をピカッとさせる》2009年 ラムダプリント、ビデオ 写真:66.7×100 cm、ビデオ:5分35秒 Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)撮影:Cactus Nakao

 また、2020年2月から世界は新型コロナウイルスの感染拡大にみまわれ、5月には緊急事態宣言が発せられた。その宣言下の中で、青焼き写真の感光液を塗ったビルボードを都心部の街中に設置した。「Tokyo 2020」「新しい生活様式」と言う文字は、2020年の東京で起きた現実をシンプルに表現している。

Chim↑Pom 《May, 2020, Tokyo(へいらっしゃい)―青写真を描く―》2020年 サイアノタイププリント、ゼラチン、キャンバス、鉄フレーム
175.5×352.3×4.5 cm 所蔵:高橋龍太郎コレクション(東京) Courtesy:ANOMALY and MUJIN-TO Production(東京)制作風景:東京、新宿

 作品のテーマは、都市、消費主義、飽和と貧困、日本社会、原爆、震災、スター像、メディア、境界、公共性など多岐にわたる。10のセクションと共同プロジェクト・スペースで構成されているが、次は何が出るかと、わくわくドキドキの展示内容が続く。さらに森美術館の高い天井や、53階の立地をうまく活かした、ダイナミックな展示風景である。初めてChim↑Pomに出会ったにしても、非常に刺激的で想像力を駆り立てられることだろう。Chim↑Pomの17年にわたる活動が凝縮された最大のいわば回顧展、これは見逃せない。

『Chim↑Pom展:ハッピースプリング』は、森美術館にて、5月29日(日)まで。会期中無休(10:00~22:00火曜日のみ17:00まで)。


サントリー美術館様

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