25.05.14 update

喜多川歌麿の幻のシリーズ「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」が約43年ぶりに再発見され5月20日から特別公開される!

 現在、東京国立博物館では、特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」が開催されている。本展に関連する調査のなかで、蔦屋重三郎がプロデュースした喜多川歌麿作品の中でも特に重要と思われる作品「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」が約43年ぶりに再発見され、5月20日(火)から同展で特別公開されることになった。
 喜多川歌麿は、寛政4年(1792)頃から版元蔦屋重三郎より美人大首絵の出版を始め、美人画の名手として人気を一気に集めたことで知られている。なかでも「婦人相学十躰(ふじんそうがくじってい)」は、最初期のシリーズの作品でタイトルは、10通りの女性を描き分けるという意味を指すが、何らかの理由により刊行途中で揃物名が「婦女人相十品(ふじょにんそうじっぽん)」へと変更され、8図が刊行された時点で制作が中断されたと考えられている。
 
 「ポッピンを吹く娘」 は、「十躰」「十品」両シリーズ名で出版された貴重な作例で、とくに「十躰」の題名をもつ作品は、初期に摺られた点で極めて重要であり、現存例は世界的にも稀である。本出品作が発見されるまでは、ホノルル美術館に所蔵される1枚のみが知られていた。一方、「十品」は、東京国立博物館、メトロポリタン美術館などで数点、現存されている。

「 婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」
作者名 : 喜多川歌麿
制作年 : 寛政4~5年(1792~93)頃
判 型 : 大判錦絵
版元名 : 蔦屋重三郎
展示期間 : 2025年5月20日~6月15日(後期展示)

 
 作品裏面に捺された印章から、本作はエルンスト・ル・ヴェールの旧蔵品であることがわかるが、エルンスト・ル・ヴェールは、1895年にパリのセーヌ通りに画廊を開いた人物で、当時ヨーロッパで流行していたジャポニスムの影響下で浮世絵を愛好した人物である。明治期に数回来日し、数百枚もの浮世絵を購入、収蔵したと伝わっている。浮世絵は一般的に初摺に近いほど、輪郭線がシャープで、作品全体の仕上がりに版元や絵師の意向が強く反映されているといわれいるが、本作品は保存状態が極めて良好で、クリアな輪郭線と鮮やかな色彩を残し、まさに蔦重のもとで摺られた当時の雰囲気が伝わってくる。


特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」
会 期 : 2025 年4月22日(火)6月15日(日)
会 場 : 東京国立博物館 平成館


 

新着記事

  • 2025.06.23
    がん専門医によるヒット書籍『がんにも勝てる長生き腸...

    応募〆切:7月25日(金)

  • 2025.06.23
    被害者か、加害者か?―柴咲コウ、綾野剛、亀梨和也―...

    6月27日(金)全国公開

  • 2025.06.23
    【お出かけ情報】80年代高原リゾート地として名を馳...

    7月5日~9月29日

  • 2025.06.23
    氷河期を生き抜いた生物の秘密から人類誕生のロマン!...

    7月12日(土)~10月13日

  • 2025.06.21
    【お出かけ情報】日本の伝統文化〈BONSAI〉とフ...

    7月4日(金)~13日(日)

  • 2025.06.21
    「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」など数々の大ヒ...

    アニソン界の大王65周年!

  • 2025.06.21
    ハリウッド女優、ルーニー・マーラも体当たり、第74...

    6月13日(金)~上映中

  • 2025.06.20
    麻布台ヒルズ ギャラリー「高畑勲展 ─日本のアニメ...

    応募〆切:7月10日(金)

  • 2025.06.19
    「愛の不時着」のヒョンビンが祖国独立に命をかける孤...

    応募〆切:7月5日(土)

  • 2025.06.19
    〈忠犬ハチ公像〉をつくった彫刻家・安藤照、没後・戦...

    6月21日~8月17日

映画は死なず

特集 special feature  »

<特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が語る「三屋清左衛門残日録」~時代劇にはまだまだ未来がある~

特集 <特集>今、時代劇が熱い! 第三弾 主演北大路欣也が...

藤沢周平原作時代劇「三屋清左衛門残目録」の章

松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松宗雄が語る誕生秘話〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

特集 松田聖子デビューから45年、伝説のプロデューサー若松...

〈わが昭和歌謡はドーナツ盤〉特別企画

わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の  「芸業」

特集 わだばゴッホになる ! 板画家・棟方志功の 「芸業...

棟方志功の誤解 文=榎本了壱

VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いなる遺産

特集 VIVA! CINEMA 愛すべき映画人たちの大いな...

「逝ける映画人を偲んで2021-2022」文=米谷紳之介

放浪の画家「山下 清の世界」を今。

特集 放浪の画家「山下 清の世界」を今。

「放浪の虫」の因って来たるところ 文=大竹昭子

「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

特集 「名匠・小津安二郎」の生誕120年、没後60年に想う

「いい顔」と「いい顔」が醸す小津映画の後味 文=米谷紳之介

人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

特集 人はなぜ「佐伯祐三」に惹かれるのか

わが母とともに、祐三のパリへ  文=太田治子

ユーミン、半世紀の音楽旅

特集 ユーミン、半世紀の音楽旅

いつもユーミンが流れていた 文=有吉玉青

没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、展覧会「萩原朔太郎大全」の旅 

特集 没後80年、「詩人・萩原朔太郎」を吟遊す 全国縦断、...

言葉の素顔とは?「萩原朔太郎大全」の試み。文=萩原朔美

喜劇の人 森繁久彌

特集 喜劇の人 森繁久彌

戦後昭和を元気にした<社長シリーズ>と<駅前シリーズ>

映画俳優 三船敏郎

特集 映画俳優 三船敏郎

戦後映画最大のスター〝世界のミフネ〟

「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の流行歌 

昭和歌謡 「昭和歌謡アルバム」~プロマイドから流れくる思い出の...

第一弾 天地真理、安達明、久保浩、美樹克彦、あべ静江

故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・木下惠介のこと

特集 故・大林宣彦が書き遺した、『二十四の瞳』の映画監督・...

「つつましく生きる庶民の情感」を映像にした49作品

仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監督の信念

特集 仲代達矢を映画俳優として確立させた、名匠・小林正樹監...

「人間の條件」「怪談」「切腹」等全22作の根幹とは

挑戦し続ける劇団四季

特集 挑戦し続ける劇団四季

時代を先取りする日本エンタテインメント界のトップランナー

御存知! 東映時代劇

特集 御存知! 東映時代劇

みんなが拍手を送った勧善懲悪劇 

寅さんがいる風景

特集 寅さんがいる風景

やっぱり庶民のヒーローが懐かしい

アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

特集 アート界のレジェンド 横尾忠則の仕事

60年以上にわたる創造の全貌

東京日本橋浜町 明治座

特集 東京日本橋浜町 明治座

江戸薫る 芝居小屋の風情を今に

「芸術座」という血統

特集 「芸術座」という血統

シアタークリエへ

「花椿」の贈り物

特集 「花椿」の贈り物

リッチにスマートに、そしてモダンに

俳優たちの聖地「帝国劇場」

特集 俳優たちの聖地「帝国劇場」

演劇史に残る数々の名作生んだ百年のロマン 文=山川静夫

秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

特集 秋山庄太郎 魅せられし「役者」の貌

役柄と素顔のはざまで

秋山庄太郎ポートレートの美学

特集 秋山庄太郎ポートレートの美学

美しきをより美しく

久世光彦のテレビ

特集 久世光彦のテレビ

昭和の匂いを愛し、 テレビと遊んだ男

加山雄三80歳、未だ青春

特集 加山雄三80歳、未だ青春

4年前、初めて人生を激白した若大将

昭和は遠くなりにけり

特集 昭和は遠くなりにけり

北島寛の写真で蘇る団塊世代の子どもたち

西城秀樹 青春のアルバム

特集 西城秀樹 青春のアルバム

スタジアムが似合う男とともに過ごした時間

「舟木一夫」という青春

特集 「舟木一夫」という青春

「高校三年生」から 55年目の「大石内蔵助」へ

川喜多長政 &かしこ映画の青春

特集 川喜多長政 &かしこ映画の青春

国際的映画人のたたずまい

ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

特集 ある夫婦の肖像、新藤兼人と乙羽信子

監督と女優の二人三脚の映画人生

中原淳一的なる「美」の深遠

特集 中原淳一的なる「美」の深遠

昭和の少女たちを憧れさせた中原淳一の世界

向田邦子の散歩道

特集 向田邦子の散歩道

「昭和の姉」とすごした風景

あの人この人の、生前整理archives

あの人この人の、生前整理archives
読者の声
Social media & sharing icons powered by UltimatelySocial
error: Content is protected !!