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「生誕100年 ドナルド・キーン展」 日本人と日本文化をこよなく愛したジャパノロジストの知られざる生涯

 1922年、ニューヨーク市ブルックリンの貿易商の家庭に生まれたドナルド・キーン。偶然手にしたアーサー・ウエーリ訳の「源氏物語」との運命的な出会いを果たしたのは、1940年(昭和15)のことだった。
 アメリカ海軍の語学将校として、太平洋戦争中日本人捕虜の尋問や戦地で回収した日本語文書の解読の任務に就いたキーンは、個々人が心情を吐露した日記や遺書などに深い感銘を受けた。そのことがのちの日本人の日記研究につながったのである。

エイダック島で 1943年 後列左キーン。

 戦後、ジャパノロジストの道へと進んだキーンは、アメリカと日本を行き来し、日本の古典文学や思想、伝統芸能の研究、現代作家の翻訳を通じて日本文化を広く世界に紹介した。また谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、安部公房、司馬遼太郎ら著名な文学者も、キーンには心を許し、書き残した彼らのプロフィールは、近代文学史の貴重な証言として残されている。日本文化研究の第一人者であり、日本文学の世界的な権威とされたキーンは、2002年文化功労、2008年文化勲章も受章という確かな評価を受けた。

狂言「千鳥」の太郎冠者を演じる 1956年9月13日の「ドナルド・キーン氏送別狂言会」で、来日以後親交を結んだ、吉田健一、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫らを招いて稽古の成果を披露。撮影・渡部雄吉

 松尾芭蕉の「つひに無能無芸にして只此一筋に繋る」(笈(おい)の小文(こぶみ)」に接してから70余年、東日本大震災を契機に、日本に帰化し96歳の生涯に幕を閉じるまで、ジャパノロジストとして歩んだ軌跡、オペラや旅、日本と日本文化を愛した情熱的な生涯が多くの資料や写真で紹介される。


特別展「生誕100年 ドナルド・キーン展─日本文化へのひとすじの道」
会期:5月28日(土)~7月24日(日) 
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30迄)
休館日:月曜日(7月18日は開館)
会場:県立神奈川近代文学館 第2・3展示室 
横浜市中区山手町110(港の見える丘公園内)
問い合わせ:045-622-6666

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