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映画監督・黒澤明の礎となった「脚本家」としての仕事をたどる展覧会「脚本家 黒澤明」

 1936年にP.C.L映画製作所に入社した黒澤明は、師匠である山本嘉次郎監督の薫陶を受けながら、シナリオの執筆に励んだ。本展は、1940年初めて映画化された『幡随院長兵衛』(千葉泰樹監督)以来、監督デビューに至るまでの、「脚本家・黒澤明」の道のりをたどるものである。
 ドストエフスキー(『白痴』)、シェイクスピア(『蜘蛛巣城』)、山本周五郎(『赤ひげ』)など、黒澤に影響を与えた文豪たちの物語と黒澤映画の関係を改めて検証するとともに、いかに黒澤が文豪の作品を読み解き、自分のものにしていったかがわかる。

 さらに、世界映画史の最高峰のひとつ『七人の侍』(1954年)は、黒澤と橋本忍、小國英雄3名の合作によるシナリオが映画化されたが、キャラクターやストーリーの構造を掘り下げ、深く考え、構築していったのかその過程も紹介される。

『酔いどれ天使』(1948年)、『生きる』(1952年)、『悪い奴ほどよく眠る』(1960年)、『天国と地獄』といった名作のシナリオも興味深い。

 一方で、企画の断念を余儀なくされたこともあった。クランクインまで進みながら監督降板となった『トラ・トラ・トラ』をはじめ、映画化に至らなかった新発見の『ガラスの靴』(1971年)など、黒澤が心血を注ぎながらも映画化に至らなかった幻の脚本も展示される。

 市川崑映画監督も黒澤のシナリオをこう評している─

「シナリオというものを、こんなに面白く読ませることを発明したのはクロさんだと思う。題名のつけかたも絶妙で天下一品、いつも感嘆する。」(1987年)

「シナリオ作家黒澤」の創作の秘密を解き明かされ、「クロサワもまた文豪なり」と合点がいくのである。


 展覧会 脚本家 黒澤明

 会期:2022年8月2日( 火)~11月27日(日)
 会場:国立映画アーカイブ展示室(7階)

 

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