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瀬戸内寂聴×井上光晴、その妻。実在の人物がモデル『あちらにいる鬼』

 何とも不思議な男女の世界だ。直木賞作家の井上荒野が、父と母、そして瀬戸内寂聴という実在の人物をモデルにした小説「あちらににいる鬼」が映画化され11月11日(金)より公開される。

 昨年11月に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴が51歳で出家したのは、妻子ある作家・井上光晴との道ならぬ恋があった。「書くこと」「愛すること」で繋がれた男女が織りなす非凡な関係を描いた傑作を、寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子が演じる。一人の男を介しての二人の女はいつしか互いに同志にも似た感情が芽生えていくのである。
 寺島と豊川のコンビは道ならぬ男女の関係がぴったりはまる。普通だったら嫉妬に狂う妻が浮かぶが、夫の生きざま、経験、芸の肥やし、抱える孤独感などすべてを理解して、夫の浮気も客観的に、彼の魅力として捉える妻を広末涼子がサラッと演じていた。

 瀬戸内寂聴が、「あちらにいる鬼」が刊行されたときのコメントは、以下の通りである……。

「作者の父 井上光晴と、私の不倫が始まった時、作者は五歳だった。五歳の娘が将来小説家になることを信じて疑わなかった亡き父の魂は、この小説の誕生を誰よりも深い喜びを持って迎えたことだろう。作者の母も父に劣らない文学的才能の持ち主だった。作者の未来は、いっそうかがやきにみちている。百も千もおめでとう」というもの。
 作者・井上荒野と寂聴の関係もはかり知れない糸で結ばれているのも、また奇なり。普通ではなかなかあり得ない関係であるが、非凡な男女には卓越した世界があるのだろう。

 高良健吾、村上淳はじめ、篤郎を育てた祖母を演じた丘みつ子、蓮佛美沙子、佐野岳、宇野祥平ら実力俳優が、3人を取り巻く人間模様に深みをます。上映時間139分もあっという間だった。

出演:寺島しのぶ 豊川悦司/広末涼子

監督:廣木隆一、脚本:荒井晴彦 
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
©2022「あちらにいる鬼」製作委員会 R15+

2022年11月11日(金)新宿ピカデリーほか全国公開。

 
 

  

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