思春期の複雑な胸の内を繊細にとらえた、クリストフ・オノレ監督自身の美しくも自伝的な映画がパリからやって来た―。
17歳の冬、それは誰もが人生の変化を体験する季節。だが、フランスに暮らす少年リュカの場合は、父親の交通事故死という悲しすぎる変化だった。高校の寄宿舎からアルプスの麓に佇む自宅へと呼び戻されたリュカは、母イザベルとパリから駆けつけた兄のカンタンと悲しみに暮れる。葬儀の夜、感情を爆発させたリュカは、心配した兄から気分転換のために1週間ほどパリで過ごさないかと誘われる。ルーブル美術館を巡るなど「超クール」なパリの街に魅せられると共に、カンタンのルームメイトのアーティスト、リリオに惹かれていくリュカ。だが、リリオはリュカには想像もつかない秘密を隠していた。そうして、パリでの刺激的な日々が、リュカの心に新たな嵐を巻き起こす──。
父の死によって世界が崩壊した少年が、深い喪失感と混乱、残酷な運命への怒り、未来への不安を抱えながらも、再び前を向くまでを描く。彼を支えたのは、時には激しくぶつかり合いながらも、互いを信じる気持ちだけは失くさない家族の愛。さらに、その佇まいからアートのセンスまで一目でリュカの憧れの存在となった年上の青年リリオもまた、生きることへの悩みやジレンマを抱えていると知り、共感と共に魂が救済されていく。
主演のポール・キルシェは、オーディションでリュカ役をみごとに射止め、大胆でみずみずしい演技を披露。「新たなスター誕生」「美しくすぐれた演技」「並外れた存在感」とメディアからも絶賛され、2023年セザール賞の有望若手男優賞にもノミネートされる。また、2022年サン・セバスティアン国際映画祭において最年少で最優秀俳優賞を獲得した。現在、フランス映画界がもっとも注目する若手俳優。

リュカの母親イザベルのジュリエット・ビノシュは、かけがえのないパートナーが消えた空白に打ちのめされながらも、夫との絆を大切な息子を支える力へと変えていく気丈な母親を熱演。『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞©を受賞し、日本の是枝裕和など世界各国の名監督に出演を熱望されている。

弟の自立を誰よりも応援しているからこそ、厳しく接するリュカの兄のカンタン役には、『幻滅』でセザール賞を受賞し、主演作『アマンダと僕』でも高く評価されたヴァンサン・ラコスト。

リュカが憧れるアーティストであり、パリの多様性を体現する兄と同じ美大に通うリリオ役には、本作が長編映画デビュー作となるエルヴァン・ケポア・ファレ。いま、フランスで注目の俳優だ。
Winter boy
12月8日(金)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:セテラ・インターナショナル
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