スマホ散歩

第64回【萩原朔美 スマホ散歩】 取り残された支柱

散歩は、街を一冊の本のように読むことだ。だから、スマホでの撮影は、読書感想を忘れないための、メモ書きみたいなものなのだ。この「スマホ散歩」を読んでくれた人が、それぞれの街を読書し始めたらとても嬉しい。何か楽しい風景に出会えることを願っている。


第63回 2025年8月25日


街中で風に吹かれてバタバタと元気よく泳いでいたのぼり旗は、夜には撤去される。



店が休みの時も、我がもの顔で揺れていたのぼり旗は姿を見せない。

しかし、旗は仕舞い込まれていても、それを支えていた支柱は置き去りだ。常に歩道に放置されたままだ。よく見るとコンクリート製のものは、表面がボロボロだ。長年風雨に耐えてきた表情だ。思わず、支柱を撮影した。主役をじっと支え続け、主役が家に帰っても、まるで番犬のように外で待ち続ける。あんたは偉い!という訳で、私の支柱写真は今も増え続けているのである。(笑)

 


はぎわら さくみ エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の特別館長、金沢美術工芸大学客員名誉教授、、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。



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