第32回【成城シネマトリビア】 「ウルトラQ」でも見られる成城の風景 テレビドラマ篇Vol.1

 迫りくる電車の音で覚醒、いきなりタイトルどおりの叫び声「あけてくれ!」をあげる中年男を、万城目は再び車に乗せ、一の谷博士(江川宇礼雄)の研究所へと向かう。趣きのある洋館「一の谷研究所」の外観は、本連載でも再三紹介した「旧龍野邸」で撮影されている。当洋館は東宝や新東宝映画でしばしば使用された由緒ある建物で、本作でロケ地となったあとは作曲家の山田耕筰の棲家となり、その後は某有名美術家の所有物となる。

▲一の谷研究所は成城にあった イラスト:岡本和泉
▲龍野邸の現在の姿。かつて門があったところには家が建ち、道路からは二階部分しか見えない 撮影:神田亨

 一の谷研究所の建物は、放送第3話の「宇宙からの贈りもの」でナメゴンに襲われそうになったほかは、第4話「マンモスフラワー」、第12話「鳥を見た」、第22話「変身」、第25話「悪魔ッ子」、そしてこの「あけてくれ!」でしか見られない。建物前に登場人物が現れるのはなんと「鳥を見た」だけで、他はすべて門と外観ショットに限られる。「宇宙からの贈りもの」に至ってはミニチュアでの登場である。
 注目すべきは、これらはすべて撮影初期の作品(製作順で言うと1作目から6作目)に限られていることだ。もしかすると、一度のロケで何作分かを撮ってしまったことも考えられる。ここからは、その後はロケが許可されなくなったという事実も見えてくる。もしかすると、山田耕筰の家となったことが影響したのだろうか? 家主の龍野さんはすでにこの地にいらっしゃらないので、確認のしようがないのが残念だ。

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