第35回【成城シネマトリビア】 「気になる嫁さん」「赤い迷路」「傷だらけの天使」などで見る成城の風景 テレビドラマ篇 Vol.4

 成城にはかつて、大岡昇平や三船敏郎が愛した「栄華飯店」という中華料理店があった。筆者は74年の秋に百恵ちゃんと共演の松田優作が当店で食事している場を目撃、宇津井の自宅内シーンが隣接する住宅展示場で撮影されていたことを知る。
 そうした撮影事情もあって、本「赤い迷路」では成城のいちょう並木(まさに宇津井の自宅があった)や交差する桜並木通りで頻繁にロケが実施。宇津井や長山藍子、中野良子がいちょう並木を歩き、百恵ちゃんが桜並木通りを使って通学する姿などが撮影されている。

 他にも本作、映画『世界を賭ける恋』(59年)や『サザエさんとエプロンおばさん』(60年)に登場した「富士見橋」上で松田優作と山本紀彦が格闘したり、成城コンド前で怪しい男たちに襲われた百恵ちゃんを優作が救出したりするなど、成城の風景が頻出。隣の「仙川に架かる小橋」の方では、百恵ちゃんが優作や山本紀彦らと会話を交わすシーンもある。
 注目すべきは、登場人物の一人・大石吾郎が経営し、百恵ちゃんもしょっちゅう出入りするスナック「ビレッジ」が、成城二丁目に実在した喫茶店「シャネル」を使って撮影されていることだ。当店はとうの昔に閉店しているが、その外観はドラマで使われた時とまったく変わっていない。

▲成城に今も残る喫茶店・シャネル。今にも大石吾郎や百恵ちゃんが出てきそうだ(筆者撮影)

 ショーケンの異色作「傷だらけの天使」(74〜75年/NTV系)も、ことのほか成城ロケが多い。恩地日出夫、深作欣二、神代辰巳、鈴木英夫ら、錚々たる映画監督がメガホンをとった探偵ドラマの本作。尖ったショーケン(修)と人懐っこい水谷豊(アキラ)とのすっ呆けたやり取りが愉しく、筋立てにも従来のテレビドラマとは違う斬新な魅力があった。
 成城の風景が登場するのは、恩地日出夫、児玉進、工藤栄一が担当した三話。恩地作(15話)では、修がいちょう並木で誘拐された男子高校生の聞き込みをする際、バックに旧宇津井健邸が写り込む。並木道を北に入ると右手に神田隆の家があり、『青春の蹉跌』でショーケンが檀ふみと自転車で戯れた桜並木通りは、神田邸のすぐ先にあたる。
 児玉作(20話)で修とアキラの二人が拾った赤ん坊を捨てに来るのも成城で、この時二人はやはりいちょう並木を歩く。「太陽にほえろ!」で張り込み対象となった「竜沢寺橋」横のアパート(部屋まで同じ!)のシーンで聴こえてくるのは、懐かしい小田急ロマンスカーの警報音。ザ・ピーナッツが歌った「小田急ピーポの電車」で有名なこの補助警報(ミュージックホーン)も、やがて騒音問題により鳴らされなくなってしまう。
 工藤作の第25話では、またしてもいちょう並木を通って調査対象となる人気作家(小松方正)の家を訪ねる二人。それだけこの並木道は〝絵になった〟ということなのだろう。

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