第11回 【私を映画に連れてって!】松嶋菜々子主演『リング』、そして『らせん』へとヒットを続けて和製ホラー映画の地平を拓いた中田秀夫監督は、世界へ恐怖の輪を拡げた

 映画撮影中に作った劇場予告編(特報)の音楽はイギリスのテクノ(トランス)バンドだったジュノ・リアクターだ。日本のホラー映画にテクノ? と不思議がられたが、日本的な恐がらせるメロディは違うと考えていた。やってみたら意外に画とマッチした。ただ既存曲ではなく出来れば映画の為の書きおろしが欲しかったが、時間的には全く無理だった。

 スタッフから新宿のクラブでDJをやっていたDJ TOMOを紹介された。『feel like HEAVEN』という自主レーベルの中の楽曲がとても良かった。全編英語で〝主題歌〟として画とマッチするのでは……。とにかく公開まで時間がない。急いでCM用の15秒スポットを作り、曲をはめてみた。イケル! ただ恐怖が迫って来ない。ボーカルのサビは「♪feel like HEAVEN feel like HEAVEN~」の繰り返しでその部分しか15秒スポットでハマる箇所は無いのだが何かパンチが足りない。結局、DJ TOMOとボーカルのリエさんにお願いして、レコーディングした。ポニーキャニオンに在籍していたので諸々セッティングはやってくれた。長岡和弘ディレクターはプロである。

 歌詞を変えて歌ってもらうことを提案した。「ハ行」の感じと「カ行」の聞こえ方かもしれないと。

「♪feel like HEAVEN feel like HEAVEN~」⇒「(Oooh)きっと来る~きっと来る~」。たったこれだけの事なのだが、15秒スポットの画と「きっと来る~」のマッチ度が倍増し、恐怖が増幅される感じがした。このスポットのインパクトがのちの〝貞子ブーム〟に繋がったと言えるだろう。

 その時は、こちらの都合で再レコーディングまでしてもらって申し訳ない気持ちもあった。2人を前にしてポニーキャニオンからワンショットでCD発売します! と言ってユニット名も、その喫茶店で考えたような……。Heavenは天国で、地獄はHell。〝HeavenとHell〟。2人だから「HⅡH」でどう? という流れで発売が決定。角川グループのCM出稿も短期間で相当数流れ、CDもオリコンのチャートにランクインした。今でもワイドショーなどで恐いシーンとともに流れているのを聴くと〝ホラーの定番曲〟になったのだと思ったりする。DJ TOMOは[TOMO HIRATA]として海外でEDMの第一人者として活躍している。何年か前にブリュッセルにいる彼とFBで話す機会があり、とても嬉しかった。

 この主題歌のお陰で、『リング』が拡がっていったとも言え、音楽の影響は大きいと改めて感じさせてくれた。。

▲映画『リング』は1月31日の公開まで2週間余りというところで完成し、直後の1月14日に完成披露試写会が開催された。だが、同時上映の『らせん』は、その時点ではまだ完成しておらず、やむなく『リング』だけの披露試写会と相成った。

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